ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2003年07月21日(月) 16話 『キャラバン』

傾いだ鉄塔の袂に、群生するムシトリサボテン。
さらにそこに寄生するヤドリギの一種。
サボテンの幹に巣穴を開けている嘴の長い鳥。
風が熱い。

リアラは木陰で子供達に貴重な水を分配している。
疲れ知らずのクヴィスが周囲を見張る。
行程はまだ1/3程度。
あとどれくらいの鉄塔を数えれば、安住の地に辿り着けるのだろう。
「駅」とはいかなるものか…

起伏に富んだ荒地の急勾配を、もうもうと土煙を上げて、
6台のトライホイールのキャラバンがやって来る。
今まで自分たちがあくせく歩んできた長い道のりを、
あっという間に辿り着いてしまった。

木陰で休むリアラ達を見付けたのか、先頭車が止った。
見上げるような車輪。
テレビでしか見た事のない乗り物だった。

横腹の四角いハッチがギィと開いた。
髪を長い3つ編みにした逞しい女がタラップに一歩踏み出す。
紅色の髪に碧眼。
どこかリアラに似ていた。

「こんなところで何を?」

砂と乾燥した空気で荒れた声。

「私達は海辺の農園から逃げてきたのですが…」

リアラが答える。

「どこへ行く?」

「この先にあるという駅まで」

微妙な間が空く。

「そうか。歩いては無理だ。乗れ」

渡りに船とはこのこと。

「……はっ、はい」

一向は、無愛想だが悪人ではなさそうなこの女に気に入られたようだ。
キャラバンの行く先はいつも鉄塔に沿っている。
何故なら彼らの目的は、「虫ガラ集め」だから。
ムシトリサボテンの消化できない羽、外殻などを拾い集めるのだ。
それを粉砕して天然樹脂と交ぜ合わせて、丈夫な板材に成形する。
主に、戦艦や貨物船の建材にされる。

トライホイールの内部は意外と広かった。
生活に必要な物がほとんど揃っている。
乗組員は1台に約10人ずつ。見たところ血族らしい。
独特の訛りがあって聴き取りづらいが、クヴィスの通訳は必要なさそうだ。
リアラ以下8人は、彼らの仕事、つまり「虫ガラ集め」を手伝いながら、
着々と目的地へ近づいていった。

例の3つ編みの女が族長らしい。
名前をモーウィーといった。額に三角の文様の刺青を入れてある。
年齢は若いようで実は高齢だった。50代半ばだろうか。
彼女はリアラの容姿を見て、何か思う所があるらしく、しばし口篭もった。
子供達は「大きいお母さん」と呼んでモーウィーに親しんだ。
他の乗組員達も子供らを可愛がってくれた。

クヴィスのナビによると、あと数日で駅に着くらしい。


            
                             つづく






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