2003年07月26日(土) |
18話 『海賊の末路』 |
人工環礁連合軍のロフティーは、 各海域で海賊を駆逐していった。 根城にしていた環礁を追われた海賊達は、 バラバラになって丘へ落ち延びた。 だがそこは人間の住める場所ではなかった。
野生の果実はほとんど毒性を持っている。 家畜に適した哺乳類は、絶滅している。 昆虫は容赦なく農作物を食い荒らす。
花の受粉を助けるはずの昆虫類は、 遺伝子改良された種に負けて、めっきり少なくなった。 それでも実った果実は、種もろとも新種に食われる。 鳥なら種を糞と一緒に大地へ還すのだが、新種の昆虫はそうはしない。 いったん狂った生態系は元に戻れない。 その代償が果てしのない荒野と文明の遺骸だ。
丘に逃げ延びたいくつかの海賊のコロニーは、 バリケードを張って粗末な家屋を守ったが、 ウンカのごとく押し寄せた大型昆虫の大群になす術もなかった。 大空は陽の光を遮られ、 生きた塊となってごうごうと軋み全てを飲み込んだ。 所詮、海賊は海でしか生きられないのだ。 「虫拾い」の様に、丘のジプシーとして生きるにはそれなりの知恵が必要だ。 海賊の激減とともに、ギルドの独立自治権も揺らいでいった。
つづく
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