ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2003年07月20日(日) 15話 『計画』

湿った裏路地にオンボロトラックが止っている。
その傍らで二人の男が傾いたテーブルに肘を乗せ、
アルコールの入ったグラスをくゆらせる。

「そりゃあ大変だったなぁ」

赤い鼻の男がしんみり言った。

「しかし、村人達は皆親切でしたから」

とドーラ。

「で、そのイカした外套をくれたのは女か?」

「まさか。」

「まぁいいさ。はは」

「昨今海賊はだいぶ圧されているようですね」

「例の新設海軍のリーダーがな、つわものらしい」

「事実上、ギルド叩きですね」

「まあな」

「丘に落ちた賊達が、今度は方舟を襲うようになるんでしょうか」

「どうだか・・・」

酒をクイっとあおるモーズ。
「こらぁー」とトラックに悪戯している子供達を叱りつける。

「いろいろあったが、お前さんが帰ってきてなによりさ」

「・・・・・・」

「どうした?」

「ええ。私はここを離れようかと考えています」

「まさか海軍にでも志願すっか?」

「そうじゃないんです。あの北の駅です」

「あ〜んな辺境で何を」

「それは、今はまだ言えません」

「よくわからんが、オレに出来ることがあったら何でも言っとくれや」

「遠慮なく」

ほろ酔いかげんで見上げると、
ジオテックドームに新しい強化ガラスがはめられていた。


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修理工としての腕前で知られるガガス(ドーラ)だが、
元は海で危険に身を置きながら働いていた男だ。
今のささやかだが安定した暮らしに、何か違和感を感じている。
かといって指名手配が解かれていない今、
公の職務に復帰する事もままならぬ。

人工環礁連合軍と、ギルド傘下の海賊が犇めき合っている世界。
治安の悪化による海運の衰退。
このままではいけない。
この状況を打開するには武力意外の何かの手が必要だ。

ドーラの脳裏に、あの見捨てられた海底鉄道が浮かんだ。

スクリューに代る効率的な推進システム(人口ヒレ)が普及して以来、
輸送量で劣る海底交通網は、しだいに閉鎖されていった。
しかしレールはまだ使える状態にあるはず。
破壊された無数の海上駅を復興して、人口環礁との間に定期便を設ければ…
一朝一夕にいかない大事業だが、まずは小さな一歩から。

ドーラは自分の小屋へ戻ると、早速計画書を書き始めた。



--- 1月後


『アルバトロス』と名付けられた巡視艇に一人乗り込むと、
ドーラは再び海上駅へ旅立った。
自分の小屋はそっくりモーズに譲った。
  



                        つづく



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