『NO.2-A』と表示された錆びたプレートが風に揺れる。 ドーラの巡視艇が停泊する桟橋は、海賊に破壊されてから、 住人達によって作り直された新しいものだ。
40人ほどの難民達は、めいめい家族の元へ帰った。 そして海賊との件を早速訊いた。
商人、農民、そしてスラムの住人達。 協力してジオテックドームの梁を直している。 毎年ここを通る大型低気圧から、街を守る為に、 頑丈な天蓋が必要なのだ。 街にはかつての活気が戻っていた。
ブルジョア層の館には、 海賊の残していった下品な落書きがそのままになっていた。 館の持ち主はここへ戻る気が無いのだろう。
スラムの外れにあるドーラの小屋。 ×の字に釘打ちされた梁に、小さな張り紙。
「ガガスさんへ。戻ったら連絡くれ。モーズ」
モーズとは、酒飲みの仲買人のおやじさん。 ガガスとは、ここでのドーラの通り名だ。 ひととおり小屋の中を点検してから、 ドーラはモーズの住んでいたブロックへ足を運んだ。 自分がいない間、ここであったことを詳しく聴きたかった。
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路地を曲がるとオンボロトラックが止っていた。 モーズのだ。 赤ら顔の中年男がこっちに気づいて駆けて来る。
「よおよおー! ガガスー!」
頬の肉が緩む。
「おやっさん! お元気そうで」
「やっと戻ったんだな。まあ座れや。まあ飲めや。」
「そんなに強く叩かないで下さいよ〜」
「あははは。」
「待ってな。今上等のを持ってきてやる」
緑色の瓶を大事そうに持ってきた。
「・・・大変だったでしょう」
「なぁに。海賊なんざ屁でもねえ!」
「またまた」
「それよりおまえさんの方はどーだった?」
「ええ。いろいろありました」
つづく
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