-----海底トンネルのプラットホームにて
発電機のラジエーターから漏れる暖気にあたっていた1人の男。 彼の名はドーラ。 しかし今は別の名を名乗っている。 指名手配から逃れる為に・・・
ドーラはずっと考えていた。 人工環礁に残してきたスラムの仲間達は無事でいるだろうか。 海賊の略奪は、もしやここ(海上駅)にまで及びはしないだろうか。
もうしばらくの間、厳しい寒気が続く。 食料は乏しい。 皆この地底でじっと耐えている。
---数ヶ月後
ようやく迎えた夏季のまだ冷たい潮風を頬に受け、 海上駅の村人達はオキアミ漁のために、漁船を繰り出していく。 慣れぬ仕事を手伝う難民達。
ドーラは錆びついた巡視艇の手入れを始めた。 再び人口環礁へ、皆を帰す為に。 なんとか受信したニュースによると、自分の街は海賊の手から逃れたらしい。 かつて避難していたクロレラ農場のファーマー達も徐々に戻ってきていると言う。 あの懐かしい街に帰れるのだ。
旅支度を終えた一行は、防寒テントを張ったデッキから、 小さくなる駅を見ながら、大きく強く手を振った。 自分達を親切に受け入れてくれた村人達との別れは涙を誘った。
村長(むらおさ)は別れ際、ドーラへ贈り物をした。 それはフイゴアンコウの丈夫な皮で作られた美しい外套だった。 外套をまとったドーラは、立派な海の男に見えた。
2週間ほどして見えてきた古里。 ジオテックドームのガラスが無くなっている。 きっと海賊にやられたのだろう。 皆はそれを見て心が痛んだ。 しかしこれからの街の復興に向けて、心を一つにしていた。
つづく
|
|