生物気象局から、南部沿岸一帯に避難勧告が出された。 30年に1度のオニカマドウマの大発生。 ヤツらの幼体には羽根がある。 1m近いバケモノが、ウンカのごとく地平線の彼方より襲ってくるのだ。
テレビニュースを見ていた子供達が不安がる。 海岸地帯では、普段食されない“ドクマツバギク”までが、 根こそぎやられていると言う。 ここの農園など一溜まりも無かろう・・・・・・
前回の大発生により、ロフティー1家が受けたような被害が、 またもや訪れるのだ。こうしてはいられない。 群れをなしたオニカマドウマの幼体は、たいへん狂暴化している。 屋外にいたら人間だって襲われるだろう。 ここの建物はそれほど頑丈にできていない。危険だ。 一時、近くの方舟へ避難するのが賢明だ。 しかし、 リアラはギルド組織からの指名手配を受けているのだ。 子供達だけでも安全な所へ移さなければ。 被害地域が近づいている。 時間が無い。 どうしたらよいか・・・
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クヴィスの改造したシーカヤックに、 ありったけの水・食料それに苗と肥料を積みこんで、 避難勧告地域から離れる為の旅が始まった。 リアラと離れたがらない愛する子供らと共に・・・
この農園が全滅するのは諦めよう。 しかし、いつかまた・・・ リアラは慣れ親しんだ農園を振りかえりつつ想った。
四足姿勢モードで腰に太い綱を巻き、カヤックのソリを引くクヴィス。 農具を護身用に構えながら、子供達は健気に歩きつづける。 岩砂漠の起伏に富んだ地形は、子供達にとってもリアラにとっても辛い行脚だ。
過去の遺物(鉄塔)を見上げて溜息を漏らすリアラ。 点在するこの塔を辿っていけば、安全な「地上駅」に着くとクヴィスは言った。 さて、あと何日くらいかかるのだろう。 今はクヴィスにインストールされた電子マップを信用するしかない。 子供達は時たまムシトリサボテンに巣食う鳥を指差しては、
「お母さん! 見てっ綺麗な鳥だよ。お母さんの鳥みたいだよ」
とはしゃぐ。 今、幸運の紅粉鳥は海獣の皮で作られたバスケットで小さく丸まっている。
そう。。。幸運の鳥
きっと一行の行く手には幸運が待っている。
つづく
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