「止ったら爆発するわよ!」
。。。おいらは、なぜか三日三晩おどり続けている。
「あたいのヒールん中には、小型TNT爆弾がしこまれているのよ、本当よ!」
。。。この状況は、いつか読んだ童話と似ている。
「ほ〜ら、、次は三角ステップ&てのひらキラキラよ!」
。。。くそぅ、ぼろいパンプスの分際でおいらを操りやがって。
(汗)ぜえ、ぜえ・・・
「ぶつくさ言ってないで、まじめに踊りなさいな!」
。。。どっかに親切な木こりさんは居ませんかぁ〜
「はいはい、、次ぃー! おはっス、おはっス、腰ふって!!」
。。。なんたる屈辱。。。そもそもこんな物が夜道に落ちてるからいけないのだ。
ついうっかり履いてみちゃったおいらが、バカだったよ。
「は〜い、温まってきたとこで創作ダーンス! お題は【台風】ね!」
おいおい。。。たいふうて。。。
「センス無いのねえ、ただグルグル回ってるだけじゃ〜ない!」
ぜえぜえ ヽ(*X*)ノ んなこと言われても。
「まあ良いわ、 次のお題は【雷】ね!」
こっ、こんなかんじかな、 ぜえ、ぜえ!
「あれまあ、それじゃ食当りのウミウシねえ。」
。。。もうあかん。。。眠いし。。。足痛い〜
ドテッ
「爆発まで10秒よ。」
くつが。。。脱げない。。。
「9、8、7、6、」
。。。どこかに解除スイッチが有る筈!
「3、2、」
このリボンを廻すのか?
(@O@;)うおぉぉぉぉぉぉーーーー!!!
・・・・・・おや?
と、止ったの?
「苦しめてごめんなさい。あたい・・・寂しかったの。」
なんだよそれ。。。騙したのか?
「あたいは、捨てられた可哀想なパンプスちゃん。美少女の霊が乗り移った・・」
。。。あ、脱げた。。。
「怨みさまよい、はや百年。」
。。。こんな物騒な物は、アンビリバボーに送ってしまおう。
「あたいをどうかウェールズの父のお墓へ・・・」
。。。送料無いしな〜〜 おいら貧乏なのよ。
「あたいのヒールの中には、母の形見の指輪が入っています。」
ぐいっ、 あ、取れた! ポロン
「その指輪をお金に替えて、イギリスへ連れていって・・・」
。。。悪い事考えちゃいそう。
「海の見える、あの屋敷・・・楽しかった日々。」
。。。こんなくつはハチ公の耳にのせちゃおうかな。
「ねえ、あんたあたいの話、聞いてるの?」
。。。それより、喋るくつって珍しいから、見世物にしようか?
「なにブツブツ言ってるのよ! 同情して協力しなさいよ!」
。。。とりあえず、家に持って帰ってから考えるか。
「あたいは可哀想な美少女なの。悲劇の運命にもて遊ばれた・・・」
。。。とっとと眠りてえな。。。
「あの頃は夢の様に幸せだったわ〜。誰もがあたいを愛してくれたの。」
やれやれ、お喋りな靴だなあ。
「そこの道行くおねえさん、喋るくつは要りませんか?」
「これ〜〜? きったな〜い、 踵が取れてるし〜。」
「そんな事いわずに、タダなんだからとっときなさい。」
「あんた、頭おかし〜んじゃない?」
「そこの道行くおじさん、喋るくつはいかがでしょう?」
「んあ? シャベルで発掘ガイド?? ヒック!」
「いえ、何でも有りません、失礼しました。」
「そこの道行く英国紳士、帰国の際にはこのくつを・・・かくかくしかじか。」
「私は、少女は好きだが、靴の形で高飛車な少女は好かんね!」
「あ〜〜 めんどくさい! とりあえず帰ろう!!」
「あたいをどうする気? 置いてかないで!」
「分ったから黙れよ。捨てたりしないから。指輪も入れとくし。」
「あいがとう・・・もう踊れなんて命令しないから、連れていって。」
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あの日から、おいらと赤いくつの生活が始まった。
時々、自転車の前かごに乗せて海までサイクリングに行く。
靴型少女は、もう祖国の話はしなくなった。
おいらは、機嫌が良い時は、ウミウシ踊りで彼女を笑わせたりしてる。
END
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