ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2002年03月16日(土) 残された者

   
セラミックのプロテクターで身を堅めたオレは、

―人灼熱の砂漠をさまよっていた。

長いあいだ疲れを感じることなく‥‥ひたすら。

ところで、オレには分からないことだらけだ。

自分がいつからこうしているのか、

いつから自分 が魂を持ってこの体を支配しているのかということさえ・・・。

まあいい・・・こうしている事に何か意味があるのだろう。

無気力な思考をめぐらせはがらも、

ただ焼かれた砂の上にブーツのつくる独特な足跡を刻んで行く。


時間の無いこの世界にも、ようやく変化が起きた。

広い世界を、頭上から支配していた 恒星は、

地中から沸き立つ熱気をひきつれて、

遥か地平綿の彼方へと姿を消した‥,,

うって変わって、オレの外殻をも凍らせるようは極寒の夜が訪れた。

が、これは自分 にっとて、ただの「暗さ」でしかない。

何故ってそれは、誰かこの体を創った者がそうした のであろう。


相変わらず、オレの足は動き続けている。

一瞬、視界の右を地平線をなぞるように一筋の 光がよぎった。

斬り裂かれた空気は、奇妙は悲鳴を上げると、

またいつもの静寂の中に息をひそめた。

そんなことが幾度か繰り返された。


 12度目の夜。

オレは、辺りの様子が変化していることに気づいた。

波打つ砂の山は平坦になり、

ずっと向うの方には何かごつごつしたものが無数に 散らばっている。

進むにつれ、それらは砂の中から―部を覗かせた過去の遺物であると 解った。

見たところ、さほど古いものてはなさそうだ。

オレの―本しかない腕はその中の 一つを 造作につかみ上げると目の前へ持って来た。

何ということか、それは 分析する間もなく砂のようになって、

頼りなく指の問からこばれおちてしまった。



・・・不愉快だ・・・


六つの足のそれぞれは微妙にリズムを狂わせ、

動きを鈍ら せはじめた。

関節がやられたらしい。自分でわかる。

痛みはどというものでなくただのデ ータとして伝わってくる。


オレは、凍った砂の上に停止した。

  
*

生物たちは何故だろうか、

彼等の足下に浮かぶ赤茶けた惑星へは降りようとはしなかった。

したがって、砂の上に残して来たものや、その―部分を回収するつもりもない。

生物たちは複数ではあったが、意思は―つに結合されていた。

―つの結論は「あきらめ」であった。

恐ろしいほどの静寂が、重く冷たい大気が、無数に散らはる過去の繁栄と、

滅亡を示す残骸を惑星の表面に固定していた。

腐食した有機物の中にも―つの

意識が存在した。しかし、今にも消えそうだっだ。

                                 



*



オレの身体は、もうほとんど麻痺してしまった。

・・・この中枢部もそろそろ……殺られる。

・・・もういい‥‥‥‥‥役目を果したのだから。

あれから18年と2ケ月が過ぎた。時間とは曖昧なものだ。

銀河系が生き ていた時代、地球の周期活動を基に割り出したものらしいが、

基準となっているものすら死んでしまった今、何の意味も持たないのかもしれない。

*

惑星は、永遠に夜であった。まるでなんらかの感情を持ってるかの様に。

二度と繰り返さぬために、Thirdとともに自分を閉ざしたのかもしれない。


*

Thirdは死んだ。

次にFourthが作動を始めた。

Thirdの記憶、つまりこの惑星 に関するあらゆるデータを受け継いで、

再びこの地に降り立つことの無い主人を待つため。

これが最後の子備コンピュ―タであり、 四番目の意識であった。

Fourthが初めに見たものは、何だったのだろう。


南の砂漠の向うにたたずむ傾いた建築物の群れ・・・

それとも厚い雲から射し込む僅かな月明かりだろうか・・・・・


                                  

 END


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