2004年11月09日(火) |
【水饅頭観察日記】その18〜20 |
できればリアルタイムでお届けしたかったと、 自分の不甲斐なさを恨まずにはいられない、誕生日の本日(笑) 全21話(話というか、日というか)の水饅頭観察日記。 今しばらくおつき合いいただければ幸いです。
2004年09月20日(月) | 【水饅頭観察日記】その18 |
せっかくの無職なんだから、わざわざ日曜日の人混みにでかける必要もないよね。 と、もっともらしいことを言ってみたりしながら。 1日中、水饅頭を傍らに置いて「塊魂」をしていた。 ゲームに合わせて、水饅頭も歌う。 今日の水饅頭は、いつも以上に良く歌っている気がする。 ゲームの歌に触発されているのだろうか? ご機嫌というよりは、熱唱という感じ。 ソウルシンガー水饅頭と名付けよう。 転がれ! 歌え! 水饅頭! どちらかというと、水饅頭よりも、私の方がご機嫌な一日でござった……。
2004年09月21日(火) | 【水饅頭観察日記】その19 |
歌う水饅頭を指先で撫でながら、出窓から外を見上げたら、ピーナツ型の月が出ていた。 会社帰りに出会った露天商で水饅頭を買ったのは、月が金色に輝く夜だったなぁ。などと、しみじみと思い出す。 満月では無かったように思うけど、やけに綺麗な月だった気がする。 なんだか随分と昔のことのように感じるけど。まだ2ヶ月も経っていないのだと思うと、すごく不思議な気がした。 いや、水饅頭相手に、十年来の仲だとは思わないけど(笑) そもそも、この水饅頭は結局、植物なのか動物なのかもわからないままだけど。 これはこれで、こういう生き物なのだと思えるようになってきた。 水饅頭は、水饅頭であって。こういう生き物で以外ありえない気分。 始めは苗だったというのに。今やすっかり、一人暮らしの私にとって、大切な同居人……同居饅頭? 同居……。まあいいや。とにかく、それだ! 水饅頭は、今もご機嫌に歌をうたっている。 夜だけど。風も穏やかで気持ちが良いし。明日、仕事があるわけでもないし。 せっかくだから、散歩に行こう。 「行くよね? 夜散歩」 つるつるの表面を軽く突いてたずねたら、水饅頭は「きゅ」と、ご機嫌に返事をした。 月の光を浴びながら。二人でのんびり、夜空の散歩。 のんびりって、贅沢だなと思った。
2004年09月22日(水) | 【水饅頭観察日記】その20 |
朝起きたら、水饅頭がいなかった。 朝陽に照らされた出窓の上で。水をたたえた白いお皿だけが、きらきらと、小さく光を反射していた。 声を出して呼んだけど、返事がない。 目を見開いて、出窓の辺りを見回したら、お皿の陰に、小さな半球型のおはじきみたいな物が転がっていた。 朝陽を反射して、淡い水色の光を揺らす、おはじき。 根拠は何もなかったけど。 これは水饅頭だという、確信があった。 わけもなく震える手で、おはじきを拾い上げた。 ひんやりと冷たくて、固い。ガラスみたいな、丸いおはじき。 声をかけたけど、やっぱり返事はなかった。 しばらく、掌にのせたまま、じっと見つめていたけれど。 結局、水饅頭はその後、一度も歌わなかった。
ゲームもせずに、ずっと、水饅頭を眺めていた。 霧吹きで、水をかけてみたりもした。 氷を浮かべたお皿に、そっとつけてみたりもした。 でも、水饅頭はもう、ふるふるしなかったし。 歌いもしなかった。
気が付いたらすっかり夜だったけど。 何もする気が起きなかったし、日記を書く気もしなかった。
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