箱の日記
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すこし無理矢理に休みとした。やっとこの頃、真夜中に蝉が鳴かなくなったようだ。 いちばん短い八月はここに。 秋の夜長もすぐそこだから。
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庭へ出ると 案外暗いことに気づいた カーテンが分厚いのか、照明が弱いのか、 雲がはねかえす街のかがやきもなく、 月がどこにあるのか、わからなかった 草むらの中から、虫の声がいくつも発信される りんりん、るるる、らんらん わたしと話したがっているのではないよ やりたがっているんだ 竹刀を握って、わたしは素振りをはじめた こんな真夜中に、びゅう、びゅう、と 立ち止まった空気を切り裂く音が、虫たちの鳴き声に混ざる まったく、どうかしているってもんだ
果たして、足の火照りはどこかへいってしまったようだが 背筋をなにものかがとらえて離さなかった わたしは くるな、くるなと 汗ばんだ掌で握った竹刀を振りおろしていた
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