箱の日記
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告白
僕らは、陰のない公園のベンチに座って、 どんなささいなことでも、話題にしなくちゃいけなかった。 子供がつくりあげた砂山だとか、 そこにやっと通ったトンネルのはなしだとか、 刈られたばかりの草むらのにおいだとか。 あとは、 どうしようもない日照りのこと。 そのどれもが、長くは続かないのだし、一度言葉にしてしまったものは それっきり。 汗を拭いて、僕は途方に暮れた。
(きみにはなしたいことなんてほんとうはなにひとつないんだ)
僕らは、午後の一時から、いったい何時まで あのベンチに座っていたんだろう。
その夜、きみに電話する声がふるえて、すごく恥ずかしかったし、 なにより、電話ボックスのなか、見たことのないくらい 大きな蛾が、じっとみつめていることに驚いたんだ。
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