箱の日記
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春の嵐
街は春の嵐でたいへんだった 自転車が倒れたり衣類が飛んできたり なにが彼をそうさせるのか 突然声を荒げるように勢いよく吹く みえない遠くの西から ちょうどここらを狙って
釣りに出掛けると いつも風が強かった 灯台へ続く送電線が切るような音をたてて 風の唸りを僕に伝えた 仕掛けを思うように放れず 恨むように西のほう 明るい雲の切れ目のあたりをぐっと睨んだ まったく迫力不足だよなあ
風に立ち向かうほど僕は雄大じゃない 恨んでも仕方がないというより 逃げ腰 相手は半径6400キロメートル 地球だ いやそれ以上かもしれない もっともっと 神様よりもっとのものを睨んだのかもしれない
コンビニの袋がビルの上まで飛んでいきそうで 怖いと思った いろんなものが飛んでいる ざわざわと みんな風に困っても何も言わない あたりまえだ 風のふいてくる西の空さえ見ない 乱れた髪型 を大切なふうに押さえながら 信号を渡っていくのがせいいっぱい 僕だってそう
ドン と大きい音がして 急にこの風がやんだら 飛んでいるなにもかもが落っこちて だれのせいだか やっとのことでわかるのかもしれない
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