カンラン
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2002年10月07日(月) 陽の早く昇る場所 4





目が覚めると,TVを見ながら弟がヨーグルトを食べていた。

あれ。なんだか何日か巻き戻ししたみたいだ。

今日は寝不足。

深夜3時に目覚めてからの空白の1時間半が悔やまれて仕方ない。

その後の眠りはどうやら深かったようだけど・・・。





弟はさっさと用意して,

ミュージシャン同士の結婚を伝えるニュースをぎりぎりまで見てから,

8時を少し過ぎた頃に学校へ向け出かけて行った。





私は・・・友達との待ち合わせは新橋というところに10時半。

最初は浅草というところで10時半だったけど,

雨がひどいから,という理由で新橋というところになった。

弟の部屋を10時頃出ればいいとのことだったけれど,

手持ち無沙汰なのと落ち着かないのと心配なのとで

結局9時半には戸締りをしっかりしてそそくさと退散した。

そして駅へと続く坂の途中のコンビニから大きな旅行鞄を送ってもらうことにした。

友達と会うには邪魔っけだ。





案の定,新橋には予定よりかなり早めに着いたので,

ガラス窓から街なみを眺めていたら電話が鳴った。

あー,もう着いたのかぁ?と思って嬉し気に出てみると・・・

どうやらまだこちらへの移動の途中で,

晴れたのでやっぱり浅草から水上バスに乗らないか?,と言う提案。

申し訳ないけど,危険は冒したくないので私は動かずここにいます,と伝えた。

禁煙のスタバで(地元ならまず入ってない。)

アイス・ミルクティーを飲んでしばし待ちのポォズ。

半分ぐらいまでちびちび飲んだところで友達登場。

去年のゴールデン・ウィークぶりだ。





一日周遊券を買って,

二人で海辺を走る電車に揺られながら

喋っては窓の外を眺めてまた喋る,っていうリズムがとてもここちいい。

ぐるりぃっとカーブを描くレールは遊んでるみたいだ。

こういうのって案外いろんな場所にある。

私に近いところだと音戸大橋やおろちループ。

それなりの理由あっての設計だろうけど,

見る人を不思議がらせ,楽しい気持ちにするかたち。





お台場は二度目。

ずっと前に連れて来てもらったときよりも建物が増殖しているような感じを受ける。

ぶらりぶらりと歩いて,

悩んだ末に,赤い水玉コーデュロイのスカートを2,000円で買った。

お昼はちょっとした中華街のようなところで飲茶食べながら,

前回の京都散策の時の写真を交換したり,おみやげを渡したり。

よりにもよって餃子が品切れだったのがいまだに心残り。

いつでもどこでも食べれるけれど,あの時食べたかった!

再びしばらくの散策の後,

私の飛行機の時間を気にしながら,早めにカフェに入った。





少し前までメールでやりとりしていた話を実際に彼女の口から聞いた。

どういうわけか彼女と私に関して言えば,

物事そのものの質は違っても,

何かが起きるタイミングはいつもだいたい同じ頃。

星占いやなんかをまるまる信じるつもりはないけれど,

あながちデタラメでもないような気すらしてしまう。

人間ってもしかしてグループ分けできちゃうのか?

そんなことをちらちら考えながら,彼女の話に耳をかたむけていた。

だって,そうだ。

さみしいようだけれど,

他の人ができることってそんなに大きなことじゃない。

かわりになってあげることも,

彼女が受けたのとおんなじ傷を自分につけるわけにもいかない。





けれど私は聞くことはできる。

いくらでも聞く。

聞きすぎて私の耳がつぅんとすることは,まずないし,

喋りすぎて彼女の口が渇くのなら,またお茶をすればいい。

そして今からのことなら一緒に考え出し合うことだってできる。

束の間の逢瀬でも,

これが彼女にとってちょっとした心の休憩場所になったのならいいな,と思う。

去年,私も彼女におんなじようにして助けてもらったんだ。





心配性の私達はそれから,予定していたより早くカフェを出た。

来た時とおんなじように今度は夕方の海をぐるりぃっとまわり,新橋へ。

ここで別れるんだと思っていたのに,

心配なのでもう少しついて来てくれると言う。

私が迷わないところまで。

嬉しいものの,これにはまいった。

誰かと別れるのは早目がいい。

長引かせるとさみしさが倍増するからだ。





結局彼女とは浜松町のモノレール乗り場,改札のところで別れた。

羽田空港は終点,ここなら反対方向の電車に乗ってしまうこともないから,と

私に向かって笑ってくれた。

嬉しかった。

けど同時にまたしばらく会えなくなるんだね。

なんだかくやしいのでそのままモノレールに乗った。





大きな窓も,荷物置き場も,変な配列の座席も,もうものめずらしくなかった。

ほんの数日の間,東京にいただけなのに。

人間って,こうやってどんどん慣れていくもんなんだよね。

何事に対しても。

自分が抱いた驚きや発見やちっぽけな気持ちでさえも

何かのかたちで残しておきたい。

いつか引っ張り出せるように。





みんなのあったかさにくるまって,そんなふうに思ったのが今回の東京旅行でした。







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