TVドラマ「奇跡の人」は毎週見ていた。 映画「ホワイトアウト」はアホいと思った。 という訳で私の中で真保裕一という作家の評価は「微妙」だったのだが、これ(新潮文庫上下巻)は面白かった。 この「面白かった」は大過去時制である。つまり、読んでいる最中は面白かった、という意味。 ・・・これまた微妙な読後感になってしまったなあ(笑) なんというのか、BLのかなり上手い人が書いたみたいな小説なんである。選挙に出馬する同級生と主人公の関係がBLっぽいし、リストラ→妻子に見放され→巻き込まれる事態の中で自分を見つめ直す という展開はまるきりBL。要は「巻き込まれる事態」が恋愛ドラマか別のものか、というくらいの差。てなこと言ったらこれだけ選挙のことやら建設業界の陰謀やらちゃんと説明してくれてるこの作品に失礼かもしれないのだが、どうもな〜。サスペンス的引っ張り方で読んでいる最中飽きさせないのは上手いけれど、妨害の犯人がアレで、主人公が会社辞める羽目になった元の事件の真相も「あ、そうなんだ」という感じ(真相には辿り着くが、その真相の衝撃度が大したことない。わかったからといって主人公が会社にリベンジする訳でもない)で、同級生がこだわってた昔の事件の真相も中途半端、主人公と妻子の関係も特に変化するでもなく、興味を引っ張るのは抜群に上手いがストーリーテラーとしての腕は一流とは言えない、というところ。でも要するに読ませちゃえば勝ちなんだから、これでいいのかも。 「第2の青春小説」と帯にあるように、34歳の主人公達が人生の「敗者復活戦」に挑む様は、思春期を完全に脱出するのが難しい現代社会のリアルな姿だと思う。で、そのリアルさに、いささか理想的にすぎる人間像や正論を混ぜることでエンターテインメントとして成立させてる訳だ。BLもそうである。リアルすぎてもダメ(慰めにならないから)。空想的すぎてもダメ(読者が年食ってるから)。この「適度にリアルで適度にいい加減」の匙加減が難しい、と私は思う。
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