また帰って来たロンドン日記
(めいぐわんしー台湾日記)
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2004年11月21日(日) |
【映画】盲井(Blind Shaft)中国第6世代の映画 |
うちの学校の「現代中国映画演劇」コースで出てきた映画。 監督は第六世代の監督 李楊(リー・ヤン)。
この映画は、今まで見たどの中国映画とも違う印象を与える映画。 学校の先生いわく、「自転車泥棒」に始まるニュー・リアリズムNew Realismの 流れを汲むという話だったが、なるほどなるほど。 最後にカメラが上を向き、煙突を映し出すシーンで終わるところなど、 なるほどそのものといった終わり方で、おれは好きだ。
この映画を解説したページとしては以下がある。 http://www.kanlema.com/inpaku/chinamovie/chinamovie04.html なかなかよくまとまっていて、いい解説がしてある。 (「詐欺師が最後に自殺してしまう」という記述があるが、 おれが中国語字幕つきで見た限り、これは事実と違うと思う)
学校でもらった見るべき映画の一覧の中にこの映画を見つけ、 インターネットで検索してみると、なかなか関連の情報がない。 上記のページを発見して、この人の文章を読んではじめて、 この映画をすごく見てみたいと思った。 果たして、見てみると素晴らしい映画であった。
この映画、張芸謀の「英雄(HERO)」を破って、 ベルリン映画祭の銀熊賞を獲得している。 おれは「英雄」も好きだが、やはりこの「盲井」にはかなわないと思う。
中国ではもちろん、映画審査委員会の検閲を通ることができず上映禁止。 うちの先生(中国人)いわく 「この手の映画は、中国では絶対に検閲を通ることはあり得ない」とのこと。 ただ「(映画で描かれているような)こんなことは中国では起こりえない」と言う共産党と、 監督が表現しようとしていることは、あまりにも次元が違いすぎる。
中国政府が「存在すら否定」しているらしい売春宿が出てきたり、 「社会主義好」と言う歌を「資本主義好」にしてバーで替え歌にする場面など、 表面的に理解されている中国、もしくは共産党が正当、 またはこうあるべきとしている中国とはかなり温度差がある。 そのこと自体が感覚的に珍しいが、 逆に言うと、中国だろうとどこだろうとどこでも起こりうる、 人間や社会の矛盾や葛藤をありありと描き出している、とも言えるかも知れない。 残念なことにこの映画は日本でも上映はされていない様子。 ただ、この手の映画が、たとえ検閲を通らないにせよ、 中国で増えていくことをとめることはできないだろうと思う。
この映画は、先生からDVDを借りて、繁体字中国語字幕つきで家で見た。 字幕は「繁体字中国語」「簡体字中国語」「英語」の3つから選べる。 それにしても、こんな訛りの強い中国語、しかもスラングなのか何なのか、 英語の「fucking」よろしくことばの途中途中に 「鶏巴(じーばー)」ということばがほとんどすべてのセリフにはいる。 「鶏巴」というのはもともとは「おちんちん、ちんこ」と言う意味で、 日本語に訳すと「くそったれ」とか「くそ〜〜」と言う風になるのだろう。
しかも本当に訛りが強くて、それがなおさら現実感を感じさせる。 つまりはリアリズムを感じさせるのだ。 字幕を見ても、「何」に当たる「甚麼(シェンマ)」という漢字が出てこず、 口偏に校舎の舎と言う字〔ロ舎〕が使われていて、 最初は広東語に訳されたの字幕かと思ってしまったぐらいだった。 ということで、字幕なしでは到底理解できない中国語だったが、 本当にいい映画だった。 こういう日本語にまだ翻訳されていない映画を見る時に、 ああ、中国語を勉強してよかったなと思う。 近いうちに日本語翻訳版が出ることを祈るばかりだ。 中国映画ファンの皆さん、機会があったら是非とも見てほしい。
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