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2002年07月22日(月)

深夜の激闘。

何が嫌いって、ゴキブリが一番嫌いだ。
いや、一番はヘビかもしれない。でも、嫌いなものは嫌いだ。
クモもゲジゲジも嫌いだが、ゴキブリはそれらよりも一歩抜きん出ているかもしれない。

たしかに前兆はあったのだ。
二、三日前に、母に言われてゴキブリ退治のスプレーを買ってきていた。
「液体のスプレーじゃなくて、泡のが出たでしょ。CMでやってる」
「ああ、あれね」
ちょっと嘘っぽいCMだね。
ゴキブリにシューッとかけると固まって、そのまま固まった泡を摘んで捨てられるってやつ。そんな上手くいくかい。だいたいコマーシャルってのは大げさだからねえ。
半信半疑でお店にいくと、やっぱりうそ臭い。しかも高い。
でも言われたから仕方ない。二本買ってしまった。
持ちかえると、母は新しいスプレーのビニールをさっそく剥がし、出没していると噂の廊下に準備したのだった。

そして決戦の日。
仕事が終わるのが遅いので、いきおいお風呂に入るのも遅い。
夜中にこっそり風呂場へ入ったワタシは、シャワーの蛇口をひねった。お湯が気持ちよく汗を流し…、そこで気付いてしまった。
風呂場の壁に、なぜか黒い物体が。
ワタシは相当目が悪いのだが、そいつは見間違えようもなかった。
ひぇぇぇぇ!!
深夜なので悲鳴を上げることも躊躇われ、そのせいでますます怖くなってしまったワタシは、慌てて風呂場から逃げ出した。ドアをきっちりと閉める。
「なんで、こんなところにいるの?」
涙がにじんでしまう。姿を見ただけで身震いがする。
タオルをまき、そろっとドアを開けてみた。
いる。
まだいる。
逃げる気配なんかない。
っていうか、ゴキブリにしてみたら逃げる理由がない。
これはなんとかしなければ。どこかへ行くのを待っていたら、間違いなく夜が明ける。
あれか。
ワタシは廊下へ出て、例のスプレーを鷲掴み。急いで注意書きを確認する。
シューッとかければいいのよ。かければ。
そろそろとドアを開け、ワタシはスプレーを信じてゴキブリに立ち向かった。
シューッと。
すると、なんてこった、泡が届かない。ゴキブリがはりついているのが上すぎたのだ。しかも怒ったゴキブリがこちらに向かって飛んで来た。
ワタシは大慌てで、ドアを閉めた。
その間、無言。
心の中では大騒ぎだが、言葉には出来ない。あまりのことに言葉にならないというのが、正しいかもしれない。
どうしようか。このまま放っておこうかとも一瞬考えた。でもなー、結局誰かがまた不愉快な思いをするんだしなあ。
勇気を出して、ワタシはまた風呂場をのぞき込んだ。
するとなんてラッキー。ゴキブリが床にいるではないか。しかも今度はスプレーが届きそうな距離だ。
躊躇わなかった。ワタシは無我夢中で泡を吹きつけた。黒い物体が見えなくなるまで。
白い泡に包まれたゴキブリは、すぐに動かなくなった。
これはスゴイ。怪しいなどと散々疑ってしまって、申し訳なかった。泡は見事なまでにゴキブリを包み込み、「さあ、もう大丈夫ですよ」といった様子で固まっていた。
しばらく待ってから、古い割り箸で摘み上げ、ごみ箱へ捨てた。
と、同時に深いため息が出た。
こんな夜中に何やってんだ、ワタシは。しかも、タオル一枚巻いただけの、あられもない姿で…。

そんな深夜の出来事だった。
が、人間て面白いなあと思う。あれがカブトムシだったら、手で掴めるくせに。よくよく考えれば似たようなものじゃないか。ねえ。
カブトムシとゴキブリの違い、それは絶対数なんだろうか。かたや探してもなかなか見つからず、かたや呼んでもいないのに勝手に出てくる。
そのうち何世紀かしたら、ゴキブリも夏休みの昆虫採集に加わるかもしれない。
え? いや?


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