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「 恋 」
2016年07月03日(日)


 知り合ったばかりの相手と遊びに行くとき


 あなたに行く先を決めてもらうようにしていた

 たとえ、あなたが「自分で決めるのは嫌だな」という表現をしていても

 無意識に手がゆれ、口がとがっても、意識して「えーちょっと」と言葉にしても

 バッティングセンター、ゲームセンター、居酒屋、cafe、喫茶店、色んな人が多様な場所を選んでくれた


 「私を見て」、「私を好きになって」というあなたを見たかったから

 その「私」を具体として知りたかったから

 けれど、そういう「私」を持っている人は誰一人いなかった

 ガイドブック、情報誌、新聞TVなど綺麗に切り取られた誰かの情報を選ぶ「私」が大多数だった

 ごく少数の「私」は、私だけの体験に終始していた

 「私」が楽しいから、あなたも楽しいでしょ、という人々だった


 大多数は「私」と僕の間に他人の情報を織り交ぜようとした

 恋をしよう、と想うのだけれど、どうして他人を入れるのだろうか

 「私」と僕しかいないから恋が生まれるというのに

 不安? 愚鈍? 馬鹿? 情念過多? 愚かさ? 愛された経験がない? 物質主義?

 判らなかった

 けれど、それを指摘するとあなたは怒るだけだった

 直ぐに怒りを表す人もいれば、心の奥底で沸騰する人もいた

 ついには、言うのをやめようと思った
 


 ごく少数は「私」を僕に織り交ぜようとした

 「おお、ロミオ、なぜあなたはロミオなの」のジュリエットのようにロミオにジュリエットを織り交ぜようとしたのだった

 自意識の拡大は恋ではない

 すぐに終端へと至る浅はかな錯覚なのに、どうしてだろう
 
 不安? 愚鈍? 馬鹿? 情念過多? 愚かさ? 愛された経験がない? 物質主義?

 判らなかった

 けれど、それを指摘するとあなたは飽きれるだけだった

 私の無能ぶりを口に出す人もいれば、心の奥底でさげすむ人もいた

 それが判って、言うのをやめようと感じた


 あなたと私の間にある溝に目をむけようとした、それが恋だと思い込んでいた

 けれど、あなたと私の間を見ようとする人はいなかった

 ただ、それだけ

 ただ、それだけだった


 けれど、それが私の人生を決めた

 この肉体の滅ぶまでのことを決めた

 人々が、恋と呼んでいた方法で決めた


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