初めて号泣というものがどんなものか、知った。
その様を目の前にして威に打たれたというか、
どことなく厳粛な気持ちになってしまっていた。
「なに、ぼーっとつっ立ってんのよ」
充血して赤くなった目がなにげに美しい。
思わず見とれてしまうというものだ。
「だからなにぼーっとつっ立ってんの」
ごめん、と謝るもののそこから動けない、つまり、
結果的につっ立ってるままだ。なんということ。
「もう、そんなとこにいないでってば。もしかして献立?
『初日はハンバーグ』って言ったのはあなたでしょ。
それにこれからはいつでもわたしが作るんだから
もの珍しげに見られても困るのよ、いい?」
刻まれた玉葱がミンチ肉に混ぜられてゆく。
なんだかとても幸せな気分になった。
いおり