女はめったに僕の目を見て話さないから、
僕は彼女の長いまつ毛ばかり見ている気がする。
話しかけたって、苛立ちをぶつけたって、女はでくの坊みたいで
僕は、彼女が僕をなんとも思ってないってことを知らされるんだ。
女がどれだけ僕の皮膚の下で快楽に体温をあげたって、
女が僕をまっすぐ見る日はきっとこないだろう、僕はいつだって狂いそうだ。
女が僕のことを温かいゼリー程度にしか思っていなくても、
僕は女にとって暇つぶしの贅肉みたいなものだと知っていても、
それでも、僕はどうしたって彼女を求めずにはいられないんだ。
反吐が出るほど絶望的にロマンティックだ、出口なんかない。
そして僕はとても紅くて浅い、しあわせな夢をみていた。
僕は現実と夢の狭間で、じっとりと不吉な予感が付着した自分の両手を眺める。
黒く濁った雲間から差した暴力的な閃光が横たわった首のない女を青白く照らす。
ああそうだった。 そうだ僕が。 僕が、この手で女を殺したんだ。
執筆者:東