遠くで雷の光。遅れて雷の音。夜の空が一瞬だけ明るくなってから、ゴロゴロと重苦しい音が響くまでわずか数秒。
数秒あったら、何か考えてみる。
数秒あったら、何か考える事が出来るのか、考えてみる。
数秒あったら、何か考えて、何か考える事が出来るのか、考えてみる。
実際は、数秒なんて数秒の価値しかないから、多くを考える事は出来なくて、結局、僕はツーっと雷の光を眩しく感じ、ソーっと雷の音を疎ましく感じる事しか出来ない。
でも、それでいいじゃないか、と思う。何も出来ないと感じる事が何かしている事になるのだから。僕はここにいる。ここで、雷と生きている。
眩しさに目がくらみ、そのまま、目を閉じる。何も見えない。でも、何かが聞こえる。それだけで、十分だ。
執筆者:ヴェカンヴェ