【午前0時 上野高志】
『きちんと話がしたいんですよ。きちんと話ができればきっとわかるから。だからきちんと事実を説明して欲しいんです。どうして約束の時間に来なかったんですか?返信待ってます。』
【午前0時 宮脇奈緒】
『ごめんなさい。用事が済むと思ったんだけど、ちょっと帰るに帰れなくて。置いて帰るってのはさ、普通なかなかできないじゃない?嫌ってるとかって思われたくないし、誤解されるのは迷惑だしね^^』
【午前2時 山下太郎】
《かな》は何を僕に求めているのだろう。僕は何をすればいいのだろう。そう、僕は女の子には興味がない、
どう接すれば良いのかわからないんだ。
《かな》が何を求めているのだろう、何を話したがっているのだろう。この書き込みと携帯に届いたメール、それからわかるし伝わるものがある。だけど、僕はいったいどうしたらいい?
どうすれば《かな》の期待に応えることができる?
【午前2時 春田瑶子】
千香ちゃんが私に似てしまっている。若いうちの面倒事は避けてはいけないのに。日溜りの老猫のように眺めてるだけでは寂しさを感じていることもわからないのよ。若いうちの面倒というのは怖いと言っているのも同義、
――そうか、私も怖がっているってことなのね。
ねえ、シュザンヌ。今のお前は寝てばっかりだけど、最初に子供ができた時はびっくりだったのよ、居なくなったと思ったら2ヶ月後におなか大きくて吃驚したものね。私、最近、お酒多いかなあ。どう?シュザンヌ。寝てばっかりいないで答えてみる?
ああ、お前は面倒がなくて良いねえ。
【午前6時 橘チガヤ】
奈緒、また電話くれない。あとで電話するって言ったのに。
いつも、いつも、いつも。
心配して電話をかけるのは私、迷惑そうに電話をうけるのは奈緒。
どうしてこんなに奈緒のことを考えちゃうんだろう。奈緒は私の友達でしかないのに、私は何に拘っているの?奈緒のどこが好きなの?奈緒をどう好きなの?
【午後1時 藤井千香】
たろさんとかなさん、なにかあったのかな。でも、ひとごとだから、わたしには関係ないよね。
どうしてみんな喧嘩するんだろう。外から見ていればわかるのに。つかれる人は嫌いだな。皆こどもなのよね。
【午後2時 上野高志】
どう考えても奈緒さんは嘘を吐いている。
どうして自分は「わかった」と言ってしまったのだろう。奈緒さんの言葉に説得力があるとは思えない、でも自分は引いてしまった、いつものように。
詩が創れない。苛苛する。
昼と夜とでは時間の中に違うものが流れている。
でも両方を自分は奈緒さんと共有できていないんだ。こんなところで野菜積んだ荷台押してる場合じゃないのに。
【午後2時 石沢楓志】
寂しいもの同士で何をしたところで結局報われることはない。しかし一時の慰みとはなるのは確たる事実で、オレはその手助けをしたに過ぎない。それはオレにも言えることでもある。オレも救われてるし癒されている、――だけどオレがどう動こうが何も言われる筋合いはない。
束縛を受けるにはそれなりの資格が必要だからだ。
留学してフラフラとしていた2年前からオレは楔を打ち込まれたままだ。アイツはオレのバイクに乗るのが好きだと言った、そしてオレもアイツしか乗せたくはなかった。
誰も代わりになんてなれはしない。
だから今オレが乗るバイクの後ろに乗るのはケースだけだ。感傷と笑うなら笑うが良い、愉快な気分なんてフリスク程度で壊れてしまう――些事でしかないんだよ。何かを成し遂げるには代償が必要なんだ、甘さがあって得られるものなんて大したものじゃない。
『彼女はどうにもできないな。そうそうこの前初めて仕事の依頼もらったぞ、ヴァクスってところからだ。』
【午後10時 西川加奈子】
どうして倒れてしまったんだろう。
石沢さんを想像したのは確かだけど、他の人のことだって想像するもの。男の人とだっていろいろ話せる、話せてるもん。ちょっとエッチなこと言われてもきちんと話せてるもん。
またメール来た、返事しなきゃ。あ、電話番号、書いてあるなあ……どうしよう。
電話……電話……?なんだか頭が痛いかも。
携帯にメール着てる。《たろ》さん、だ。《たろ》さんに話せるかな、《たろ》さんいいひとだもの。
『あのー、たろさん、チャットルームに来れませんか?(^^)』
【午後11時 山下太郎】
『バタン♪Ю―(^O^ )おじゃましマース、遅れましたm(_ _)m 』
『そうそうバイト先ってヴァクスだったっけ(^^;)>かな』
【午後11時 橘チガヤ】
「奈緒、どうしてたの?」
――嘘を吐いてる。
「どうして、電話くれなかったの?」
――いい加減なことを言う。
「ねえ、ちゃんと聞いてる?」
私はあなたの何なわけ?
【午前0時 上野高志】
「バイト早退してきました。居酒屋今日はスタッフ多いんで大丈夫らしいです。奈緒さん、自分のこと信用してくださいよ。人ってそんなに信じられないものなんですか?嘘なんか吐かなくてもいいんですって」
【午前0時 宮脇奈緒】
どうして私を追い詰めるの?
どうして私は責められてるの?
どうして私は愛されないの?
「そうよ、石沢君といたよ、いいでしょ?私のことなんだもの。最低の女だって捨てちゃえば良いじゃない。あなたにはたくさん友達がいるんでしょう?だったら他のひと見つければいいじゃない」
「嫌ってくれればいいじゃない!」
次回の更新は5月3日頃です