メールの着信音でハッと我に返る。
いつの間に電話を切ったか
それすら――――――
それすら覚えていなかった。
誰からも良く思われたいのは人間として当然の事で
日々そう思いつつそれを理由にして逃げた事もあるが
そんな【山本太郎】が
嫌いではなかった。
そんな【山本太郎】が
いつの間に電話を切ったかすら覚えていないなんて。
メールは≪かな≫からだった。
「たろさん!!今やっと仕事が一段落したんですよ(^^)」
他愛のないメール。
「僕、女の子にはまだ興味ないんで。」とは言ったものの
≪かな≫は悪い気はしていなかった。
また悪い癖だ。
奴が彼女がいないから話を合わせてしまった。
返事を返してから、また桜に見入る。
暗くなっても同じ物を見続けていた。
「自分」を通して「桜」を見ていた。
≪かな≫を待っていた。
いつまで経っても
自分が唯一待っていた≪かな≫からの返信はなかった。
「今日は布団に入って、早く寝よう」
そう自分につぶやいて、昨日と今日の日付を無理矢理飛び越えた。
次回の更新は5月1日頃です