2006年02月15日(水) |
阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』 |
軽いんだけど、重みがあって、真面目腐っていながら脱力感があって、おされだね。 都会の今の空気感がすごく乾いた感じでカッコいい! (渋谷がどんなとこかはよく知らんいなかっぺなのですが、そうぞうの渋谷にジャストフィット☆)
日記形式の一人称でつづられていくある若い男の日常なんだけど、どこにでもいるような若者のありふれた日常である風を装ってはいるけれど、読み進めるほどにどんどん謎に引き込まれていく感じがして、夢中になってしまいました。 これは、文句なく面白い。 極限まで玄人くささを消して、若い世代の素の文体を装っているからだまされそうになるけど、これは確信犯だね。 ものすごく計算しながら狂気やチープなアンダーグラウンドの世界を描き出しています。
そして、読み終わってもなお謎を残す深みのある作品です。 作者の作品では初めて読んだんだけど、断然興味持っちゃった。 又他の作品読んでみよっと。
「オヌマさん、また慎重にやれっていいたいんですか?おれに」 ようやく言葉を発したものの、彼は依然ぼくと顔をあわせようとはしなかった。 「何だおまえ、おれに指図するなって感じの顔だな」 「べつにそういうわけじゃあないですよ」 「ふて腐れるなよ、おい、冗談も通じないのか?そんなんでよくいままで生きてこられたな、運が強いよ、おまえ」 「・・・・・・自分のほうが年上だからってあんまりなめるなよ」 ここでヒラサワは僕の顔へ視線をむけた。どうやら腹を決めたらしい。 「ああ、悪かったな、気に障ったのなら謝るよ。おまえを怒らせたくていったわけじゃあない」 ぼくが素直に謝るのを見て数秒間視線をはずし、ヒラサワは表情をやや軟化させた。わかればいいんだ、とでもいいたげだった。 「いいですよ、べつに。ただちょっと気分が悪くなっただけだから」 「ほう、そうか。鈍感なやつでも気分が悪くなるのか、大したもんだな、小僧」 咄嗟にヒラサワの眼つきが険しくなり、ぼくのほうへ顔を近づけてきた彼は椅子から腰を少し浮かしているようだった。だが次の行動を決めかねており、ぼくの出方を待っている。ぼくは彼の肩を右手でつかみ、再び態度を変えてこのように述べた。 「まあ慌てるな、おちつけよ、いまのも冗談だ」 ヒラサワが、ふざけんなよ1と怒鳴りかけたのを遮り、僕は言葉をつづけた。
私の知らない世界だ〜
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