2003年03月28日(金) |
北京ヴァイオリン(ネタバレあり) |
映画「北京ヴァイオリン」の試写会に行ってきた。もちろん自分がバイオリンを習っているからでもある。中国映画はほとんど見たことがないのだが、なかなか味のある映像で、中国語の響きもまたよい感じがした。
実際のところ、不思議な話ではあった。感動する話、親子の絆の話という前評判であったが、なんだかちょっと違ったような気もした。でも、会場に来ていた人は結構泣いていた。私はじわっと来るところはあったが、泣くまでには至らず。
チュンは13歳の少年だけど、女性に夢中。そういうお年頃なのかもしれないけどね。大人の女性を好きになってしまう(?)ところが、なんだかよくわからない気もした。結局彼女が買いたがっていたコートを買うために(彼女を元気付けようとしたのもあるんだろうが)大事なバイオリンを売ってしまうんだよね。私としてはこの部分がもう納得いかなくてしょうがなかったよ。これだけバイオリンが弾ける少年。父親のちょっと異常なくらいの愛を一身に受けて、バイオリンを弾かせてもらっている少年がだよ、大事な大事な愛器を売ってしまうんだよ。たかが女がほしがってたコートのために!! はっきり言って、本当に音楽を愛していてバイオリンを愛していたらできない行動だと思った。ここの部分、この映画で一番納得がいかなかったな。実際バイオリンをやっている人なら、そういうことってできないと思う。確かに映画上では父に怒って腹いせにバイオリンを売って悪かったと謝るシーンがあるから、女のためというわけでもなかったのだとは思うが・・・。
中国では先生を大切にするというようなことを聞いたことがあったような気がした。チュンの父はチュンを男手一つで育て上げ、チュンを一流のバイオリニストにすることが生きがい。そのために自分はお金を稼ぐ毎日。そして、チュンを少しでもいい先生につけようと、先生の元に通い、あらゆる手段を使ってチュンを見てもらおうとする。チュンにとってはありがた迷惑な父親。多分過保護的愛を受けすぎて反抗したいような気にもなるのだろう。でも、お金がない苦しい生活の中、自分のためにやってくれている父の愛情に戸惑いつつもそれを無視することもできない。結局無視したのは女のためだったわけだが・・・。
チュンがついた2人の先生。1人目の先生も2人目の先生も私は含蓄のある言葉を言っていたなーと思った。1人目の先生は「嫌々弾くな。もし嫌なら弾くな。弾くんだったら楽しんで弾け」と言っていた。これはあらゆることにも当てはまるような。特にバレエをやっているのでそれに当てはめるとしっくりくる。本当にそうだ。嫌なら踊るな、踊るなら楽しんで踊れ・・・。まあ、それが難しいんだけどね。簡単そうでいて難しいことだ。何か一つの道に進もうと思ったら、時にはどうしても嫌になることだってある。そういうのがない方が少ないだろうし。
2人目の先生は「音楽には感情が大事で、それは先生には教えられないものだ。自分で考えるものだ」と言う。が、この先生、いい人なんだか悪い人なんだか最後までわからなかったな。バイオリンを買って隠しておくとは・・・。極めつけにはチュンは父の実の子ではなくて、音楽家の血筋を引く捨て子で、それを父が育てたのだという話をする。チュンはショックを受ける。でも、どうもそれは本当のこと。多分チュンもそれを薄々感じていたんだろう。
チュン役の少年は確か本当にバイオリンが弾ける少年で、それで選ばれたとか聞いたような覚えがある。だからなのか? 演技の方はちょっとわかりにくい気もした。というか、感情の表現が少なすぎてわかりにくい。女に対する気持ちとかもいまいちわからないまま、高価なコートを買ってきたりするのである。でも、最後の演奏シーンで泣きながら演奏しているのは、そういう感情表現の少ない子だからこそジーンと来るものがあったような気もするが。チュン役の子は多分本当にバイオリンを弾いていたのだと思うのだが、やはり吹き替えのような気がした。というのは、どうも弓と音とずれてる感じがすごくしたから。
バイオリンの音色。この映画の最大のよいところはこれに尽きる。もちろん話も悪くはないが、もしこのバイオリンの音色がなかったらきっと味が抜けたみたいな感じになっただろう。本当に素晴らしい演奏。誰が弾いているんだろう? 本当にチュン役の子の演奏を使っているのかな。
最後の結末が結構面白かったのだけれど、少女にとっても少年にとってもユイ先生にとっても悪くはない終わり方だったように思う。きっとこのあと、少年は絶対に有名になって成功するんだろうなーと思わせる終わり方だった。弓の毛が1本切れながらも激しく弾き続ける姿はすごかったなー。チャイコフスキーの協奏曲、聞きたくなってきた。
あとお父さん。実の子でないのにここまで一生懸命やるとは、なんと素晴らしいのだろう! 本当の親子でもここまではできないかもしれない。一体どうやって子供にバイオリンを始めさせ、ここまで育てたのか・・・。13歳以前の映像はないのでわからないけど、きっと大変だったんだろうな。この父があるから感動があるというのは確かである。
色々書いたけど、バイオリンの音色がすべてカバーしている。中国の風景、中国語の響き・・・哀愁を誘うような感じ。泣くことはないかもしれないが、それなりに胸を打つものが何かはあると思う。バイオリン好きな人には是非お勧めしたい。
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