感想メモ

2003年03月30日(日) 女優  春口裕子

幻冬舎 2003

STORY:
名門私立女子高・大を卒業し、一流の化粧品会社の広報担当として働く平川佳乃。彼女には何もかもが与えられているように見えていた。広報部から異動させられてしまった佳乃は自分が広報部にいるという見栄のために嘘をつき、その嘘がさらに嘘を呼び・・・。

感想:
 私が春口裕子を知ったのは、朝日新聞のサイトの「もやしのひげ」というエッセイを読んだからだ。彼女は新人の作家で、この作品が2作目となる。1作目は残念ながらまだ読んでいない。

 読む前からストーリーを聞いていて、面白そうだなと思っていたのだが、実際はもちろん面白いことは面白いのだが、この主人公のあまりのすごさにものすごく読むのが疲れてしまった。

 佳乃はあらゆる人に認められるために見栄を張りつづける。見栄というか演技である。みっともない姿を見せてはいけないということ、人からちやほやされたいということ、そして、友達に勝つために。でも、これが普通のレベルじゃない。たとえば高校時代には後輩からラブレターをもらう自分を演出するために、自らが人目をしのんで自分の下駄箱にラブレターを置いておいたり、友達を出し抜くために英会話教室の外人講師をお金で雇ったり・・・。もう普通の世界ではなくて、びっくり仰天。こんなことをしてまで??と思うけど、本人は至って真面目である。

 しかし、外見が華やかであるからか、家の中は散らかり放題荒れ放題である。ゴミを捨てることもしてないらしい。いわゆる汚部屋?? 着た洋服はその場に山積み、気に入らない服も床に散乱していて足の踏み場がない。

 佳乃は広報部からの異動が不本意だったのでそのことを認められず、名刺も2種類持ち歩き、いまだに広報部であるかのような態度を取りつづけているが、そこから破綻していく。

 また佳乃の友達は整形の失敗から(失敗ではなく本人がそう思い込んでいるだけなのだが)引きこもってパソコンに一日中向かっている。ネットの世界のちょっとした怖さが十分に描かれていたと思う。

 佳乃にはあまり共感はできなかった。けれど、迷子の子供を助けたり、道に迷っている人を助けたりすることは、たとえ打算があったとしてもなかなかできることではないような気もする。そういう人に声をかけてあげられるようなところはすごくいいところなんじゃないかなーと思った。

 なんだか佳乃の生活はとても疲れそう。読んでいるこっちがとっても疲れたもの。最後がまあよい終わり方だったのが救いかなー。でも、女の友情って時には怖いのね。私だったら、きっとはじめから疎遠になってしまうんだろうなーって思うんだけど。


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