宿題

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2006年08月12日(土) 哲学と癒し/中島義道×宮台真司
中島
僕はずるく今まで生き延びてきた。
妻子もあり、国立大学の教授という肩書きもある。
でも三十年前の自分のような人が無用塾には来る。
彼らだけには美しく生きてもらいたい、というのがあるんです。
私のように生きてもらいたくはない。
これは非常に酷だけれど、彼らが
「中島さんのことを学んで、立派な社会人になりました」
って言ったら、もう会いたくないですよ。
もっと悩んで美しく滅びろ、僕のできなかった唯一のことだから。
これはよく冗談で言うんです、酒飲んで。

宮台
冗談に聞こえないし、やっぱりその身も蓋もなさが、
中島さんの魅力でしょうね。

中島
何か、つい期待させることを言いたくなってしまうんですよ、みんな。

宮台
そういう方が、どうしてこんなに本をたくさんお書きになるのか
伺いたかった。

中島
こうしないと自己幻想が緩んじゃうから、
自分で観念的に固めてるわけです。

宮台
やっぱり中島ゲームですね。

中島
読者は単なる材料なんです
僕は自分がこれだけ生き延びるために、ものすごい孤独城を作った。
普通の人は僕みたいに感受性プラス客観的な事情がうまく一致して、
マイナスの菌を浴びていないから真似できないと思う。
つまり、不幸を利用する技術、ずるさ、これは不幸だからできる。
幸福な人は、そういう技術も必要なく幸福になっていく、だんだんと。
僕はそうじゃなくて、いつも幸福にならない作業をしなくてはいけない。
自分をいつも不幸に置いていかなくちゃいけない。
わかるでしょう。

宮台
わかりますよ。

中島
あなたは頭がいいから、わかるに決まってますよ。
だから僕は本が売れても不幸だし、
売れなくても不幸、もうどうしようもない。ずるいとも思う。

宮台
ええ(笑)。
僕ね、中島さんを憎めないのは、
やっぱり正しいことを書いているから。
身も蓋もないというのは正しいということだし、
僕がものを書く場合も結局、
抽象的な構造は中島ゲームと変わらないという気がする。


★哲学と癒し/中島義道×宮台真司★

マリ |MAIL






















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