スポーツにおけるどんな「清々しい美談」にも「痛々しい敗退」にも、 僕は興味がない。 新庄はどちらにもあてはまったのに、その都度まるで違う印象をもたらす。 新庄が札幌、いやSAPPOROにいったときに、ああ、この人は 地図じゃなくて地球儀をみている人なんだと思った。 大リーグにいけば成功。国内に戻れば失敗。そんな一般論が恥ずかしくなる。 その恥ずかしさはスポーツマン的「清々しさ」ではなく、 彼の無邪気さでもたらされたのだ。 そしてオールスター戦でのホームスチール。 こうまでされると呆れつつも間違いなく「感動」の側に引っ張られてしまう。 清々しくないのに、顔がほころんでしまうのだ。 言動の不思議さから新庄は「宇宙人」などといわれるが、 そうではなくて彼は野球のようにみえるなにかをしながら、 そのことで宇宙全体を守っているのではないか。 最近はそう思うようになった。
★いろんな気持ちが本当の気持ち/長嶋有★
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