宿題

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2006年07月20日(木) 白鳥の精神/小林秀雄×河上徹太郎
河上
このあいだある編集者と雑談していて、
その人が言っていたけれども、
白鳥さんが文春クラブで
大きなビフテキを食っていたのだそうだ。
そこへ側へ腰かけて雑談した。
すると正宗さんが、
きみみたいな人が編集者をやっていると、
つい知らず知らずに年をとっていくものだ。
それに抵抗していくためには、きみ、
なんでもいいからものを書きなさいと、
そう言った。
そういうことを言うということも
面白いけれどもね。
白鳥さんもそういうことを言うということは、
編集者から出発した人だからな。
とにかくそれで、それを聞いてドギマギして、
「でも才能が…」と言い出したら、
「フン、才能なんて…」と軽くいなしたそうだよ。
あの人の書くものは「フン、才能なんて」
という角度で書いているだろう。

小林
ああ、しかしあれは名文だな。
同じことを書いているのだけれども名文だ。

河上
名文と言っちゃえば全部名文だけれども、
それにしても、この一、二年のものはよかったな。
あの弟さんの死んだことを書いた小説なんて、
いい小説だ。「今年の秋」……。

小林
あの「文藝」に出ていた「白鳥百話」…
このあいだずっと読んだけれども、
面白いな。名文だな。
あれはやはり、ちょっと音楽みたいなものだな。
僕はそう思うのだ。
名文というものは実際あまり興味ないのだけれども、
ほんとうに興味ないのだけれども、あれだな、
ああいうのはいいな。
終わりがないんだよ。
ずっと読んでいくと前につながるんだよ。
そういうところは音楽みたいだな。
正宗さんの文章を読んでいると無心になる。
なんにも考えなくなる。
ああいうのはやはり名文だな。
なにが書いてあるなんてのはつまらんな。
ああいう文章は音楽みたいな…。


★白鳥の精神/小林秀雄×河上徹太郎★

マリ |MAIL






















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