永山は一九七一年に『無知の涙』というタイトルの獄中日記を出版しているが、 これを読んだときに僕は素直に「ああ、すごいな」と思った。 殺人を犯してしまったことはそれとして、彼の書いた詩がとても素朴で良かったのだ。 僕はそのなかのひとつに曲をつけた。 『ミミズのうた』という曲である。
目ない 足ない おまえはミミズ 真っ暗な人生に 何の為生きるの
頭どこ 口どこ おまえはミミズ
話せるものなら 声にして出さんか
心ない 涙ない おまえはミミズ 悲しいのなら鳴いてみろ 苦しいのなら死んでみろ
生まれて死ぬだけ おまえはミミズ 跡形もさえ消され 残すものもない憐れなやつ
おい雄か やい雌か おまえはミミズ 踏んずけられても 黙っている阿呆な奴
判ってる 知っている おまえはミミズ 先っちょ気持ちばかりに モコチョコ動かすだけ
ニョロニョロ 這いずり おまえはミミズ チョロっと遠出して 日干して果てた
この曲を録音するにあたり、東京拘置所にいる永山に一度会いに行ったことがある。 面会して録音の許可を求めたときに、彼はこう言った。 「詩は音楽なんかじゃ表現できないよ」 彼と話していて僕が感じたのは、「ずいぶん頭でっかちになっちゃったなあ」 ということだった。 取り巻いていたインテリ連中にちやほやとまつりあげられ、 またいいように利用もされていたからだと思う。 案の定というか、二冊目の著書はあまり魅かれるものではなかった。
★バーボン・ストリート・ブルース/高田渡★
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