こう考えてみると、聞き手というのは日記帳のようなものだ。 相手は日記を書くかわりに、日記をしゃべっているわけである。 だから、「聞き手」というノートに、 意見や忠告がだらだらを書き込まれていたり、がさがさ驚いて動いたり、 みんなに公開されたりすると、日記は書きづらい。 「聞き手」ノートは、真っ白で、黙っているものがかきやすい。 そんなノートをみんなが選ぶようなのだ。 聞き手になれたおかげで、わたしの前でくつろいでくれるひともあり、 その結果、仲の良い友人同士になることも多かったが、 ときには悲しい思いもした。 つらくて苦しい部分をうちあけたりすると、うちあけたひとは、 その相手が(見すかされているようで)うとましくなることがあるのですね。 …ちょうど、昔のつらい日記を読みたくないように。 そんな感じでうちあけ話をされたあと、急に相手が遠ざかっていったということが、 ニ、三回あった。
★まるごと好きです/工藤直子★
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