谷 小説家にもなりたかったんです。
高田 ほおう。
谷 小説っていってもSF。小学生だと読めない字があるんだけど、 本読みたいために勉強したりなんかして。そのうちある本を片っ端から読みだした。
高田 ひたすら読んじゃう。
谷 本を読むといってもただ読むんじゃなくて、穴を掘って、その中で…。
高田 何で本読むのに穴をほらなきゃいけないんですか(笑)。穴掘りの、入りの、
谷 身体隠しの(笑)。
高田 読みの(笑)。ヤなかたちですね(笑)。
谷 あとはハト小屋の中に入り込んで(笑)。 ハトを飼うのが、あの当時どういうわけか流行ったんですよ。
高田 らしいですね。
谷 それですごく高いのをおふくろに泣きついて買ってもらって。
高田 家で飼ってたんですか?
谷 屋根の上で。でも近所の悪ガキに「ハトなんか帰ってこないだろ」って言われて癪にさわったんで、 ハトを遠くまで連れてって放してみたら、帰って来ない。 おふくろにはいないなんて言えないから、あたかもハトがいるがごとく次の日から…。
高田 芝居するんですか(笑)。
谷 ええ。ハト小屋に入る。でも、ハテ?することもないぞと(笑)。 で、外を見たら面白いんですよ、外の風景が。
高田 ハト小屋から見ると(笑)。
谷 まさかそんなところから人が見てると思わないから、非常に隙間だらけの人が歩いてるわけ。
高田 隙間だらけの(笑)。てんでリラックスして(笑)。
谷 それ見てると面白いんですよ。
高田 のそきだ、それじゃ(笑)。
谷 はなはだしいときは、おばあちゃんがですね、田舎の方ですから、立ちションするんですよ。
高田 まさかハト小屋から見てるとは敵も知らずに(笑)。
谷 そういう立ちションベンって結構あったんですね、昔は。
高田 それをグッシッシと見て。
谷 意外な発見がある。
高田 意外な世間が見えると。
谷 それからは学校から帰ってくると、自分から率先してハト小屋へ。
高田 クククク。
谷 そこからジーっと見てる。
高田 変な子だよ(笑)。
谷 そう頻繁に人が通るわけじゃないから本を持ってって読みながら、 何か気配を感じるとのぞく。
高田 協調性なさそうですねえ(笑)。
谷 照れ屋だったし。
高田 一人で遊ぶのが好きだったでしょ。
谷 ええ。だからメンコとかもやらなかったし…、あ、そうだ、新緑の頃、 新芽を摘んで、それを小皿に入れた油に浸して、それを持って橋の上に行って、 わりと流れの急なところでそれをストンと落とすと、油が当然のごとく散りますわね。 あーっ、これだ!と。
高田 何がこれだ!かわかんないんだけど(笑)。これだ!と。
谷 つまんない遊びでしょう。
高田 グヮッハッハッハ、谷さんしかわかんないんでしょうね、その遊びは。
谷 必死に遊びを探していたのかもしれない。いまでも、ああ、つまんない遊びをしてた、 って思い出しますもの。あげくのはてに穴掘って、草を自分の身体にかけて、顔だけ出して。
高田 クク、また穴が好きですね。
谷 そのうち、本の影響からロビンソン・クルーソーっていう表札作ったんです。
高田 表札出した(笑)。
谷 暗くなっても帰らないとおくふろに怒られるじゃないですか。 だから表札出して、穴の中に入ってりゃ、見ればわかるじゃないですか。 でも、おふくろにしてみりゃ、結構ヤだったでしょうね。
◇
高田 谷さんちが火事で焼けたあと、庭で麻雀してたっていうのはなんなんですか(笑)。
谷 そのころ麻雀をよくやってたんで。
高田 なんだかわかんない人だね(笑)。
谷 もうすることがなくなっちゃったんですよ。見舞いの人がやたら来るし、 ここでうろたえてもしょうがないし、町内会の人がテント張ってくれたんで、麻雀引っ張りだして。
高田 普通やらないよな(笑)。
─中略
谷 でもお見舞いに来た人が「よかった」って。
高田 谷さん、元気なんだと。
谷 うん。
高田 ポンなんつってるから(笑)。
谷 でも、なべおさみが駆けつけてきたとき、相談したんですよ。 麻雀は不謹慎だろうかって。
高田 相談しなくたって普通思いますよ、不謹慎だって(笑)。
谷 「今日はやめといたほうがいいかね」って。 そしたらなべが「何言ってるんですか、今日やらなくて、いつやるんですか」って。 すぐやりましたけどね(笑)。
◇
谷 コーヒーに凝ったこともあるんですよ。
高田 いろんなものに凝りますね。
谷 結構淹れるの練習したんです。
高田 テクがある。
谷 ところが淹れてる最中に、突然尿意を催したんですよ。
高田 途中で(笑)。
谷 でも途中でやめちゃったらコーヒーが台無しになる。 コーヒーを無駄にするか、それとも最後まで淹れるべきか悩んだあげく、 後者を選びまして、ションベンそのまま垂れ流しちゃった(笑)。
◇
高田 最近凝ってるものは何ですか?
谷 最近はあまりないな。アリの巣を作ってるくらい。
高田 ハトだとかアリだとか変なものが好きですね(笑)。
谷 あ、かぶと虫にも今……。
高田 かぶと虫もって、夏休みの子供じゃないんだから(笑)。
谷 この前、変な虫を発見したの。
高田 発見しますね、また。
谷 植木鉢をどけたら、三十センチくらいあるきし麺のような長い虫が渦巻いてるんですよ。 捕まえようとしたらブチっと切れて、切れた先も動く。残った方も動く。 昆虫図鑑に出てないんですよ。
高田 谷さんが第一発見者じゃないんですか(笑)。
谷 いや、前に聞いたことはあるんです。またうちは、ミミズがやたらいるんで、 牛乳ビンに入れておくんです。一匹や二匹じゃなんてことないけど、 口許までミミズをつめると、見た目すごくい感じ。
高田 いい感じ!(笑)。
谷 カミさんとか子供が…、
高田 喜ぶんですか?
谷 いやがる。いやがらせには最高(笑)。
高田 おっかしいなぁ(笑)。大人になってもいまだに、一人で遊ぶのが好きなんですね。
谷 ハハハ。
高田 お酒のほうは?
谷 酒、駄目ですね。外でもほとんど飲まない。
高田 飲まないで、家で石どけて虫見てる(笑)。
★笑うふたり/谷啓×高田文夫★
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