友部正人さんの歌や詩はもちろん好きだが、エッセイも読み応えがある。
たとえば初期に書かれた『ちんちくりん』というエッセイ集を読むと、
友部さんの歌に出てくる、「素敵な与太者たち」という言葉をどうしても思い出してしまう。
でも後年になって子どもができてからも、素敵な与太者ぶりはほかのエッセイに読むことができる。
夜中に家の外にとことこ歩き出してしまった息子さんが警察に保護されたとき、
親であるところの友部さんと奥さんは吉祥寺の「のろ」という店で飲んでいた。
警察にお父さんとお母さんはどうしているのか質問されると、まだ四歳の息子さんは
「吉祥寺の、のろで働いている」とこたえたという(ほんとは飲んでいただけなのに)。
そこ面白かったなあ。なんて素敵な与太者なのでしょう。
鈴木慶一さんもかなり素敵な与太者だけど、ほんと、周囲を見回すと、
どいつもこいつも素敵な与太者たちばかりだ。私はただの与太者です。
★富士日記2(4月12日)/宮沢章夫★
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