(あなたはある種の陰惨なものを作ることで有名ですね)
G「それは違います。そういうレッテルを貼られるのはどうも嫌だな。 わたしの仕事は、必ずしもそういうものじゃないと思うんですよ。 そういうものもやっていることは分かっているが、 わたしがほんとうにやっているのは全く別なことなんだ。 陰惨なものをやっているように見える、それだけですよ」
(では、あなたは何をなさっているんです?)
G「何かは知りません。だけど、いくらそう見えても、陰惨というのじゃないんだ」
◇
(『おぞましい夫婦』について)
G「しばらくの間、書くまい書くまいとしていたんですが、どうにも胸から吐き出さざるを得なかった。 長い長い時間、原稿の前で過ごしましたよ。『ソーホー・ウィークリー・ニューズ』が、 どんなものでも載せるからとしつこく言ってきていてね。 『ようし、じゃあこれを載せてみろ』というわけだ。 それでわたしは「おぞましい夫婦」を描いたんですが、絵はできるだけ毒々しく、 しかも単調で退屈で、不愉快で魅力のないものにしました。 この間見返したら、自分が思っていたよりもさらに不愉快な作品だった」
(わたしはあまり子供になじめないほうですが、それであの本が楽しめたのかもしれません)
G「まあ、なにしろ、わたしはもう何年も本の中で子供たちを殺してきたわけね。 ある意味、『おぞましい夫婦』は他の作品よりもずっと個人的なものなんです。 ムーアズ殺人事件については山ほど資料をあさったから。 どういうものか、忘れられないんですよ。史上最も不愉快な事件のひとつだ」
G「あの本が何であるのか、わたしは知りません。読み返したときにはこう思ったんですよ、 『この本はいったい何を主張しようとしているんだ?』とね。 あの本のために、ちょっとしたジョーク──わたしにとってジョークと思えるもの── をいろいろ考えたのを覚えています。たとえば、あの殺しの後の朝食ね── 何を食べさせるのか、ずいぶん頭を絞りました。
(人工着色のグレープソーダが最初に出てきましたね)
G「これだ、と思えるまでには、いろいろバージョンがあったんですよ。 あのふたりにはずいぶん自分を投影しています。 『子供時代から、彼女は足首が太く、髪が薄かった』というのもそうだ。 『あのセンテンスは削ったほうがいいかな』と考え続けたんですが、どうも削れなかった。 結局は残すことにしたけれど、それでよかったかどうか今でも確信が持てません。 よく言うでしょう、一番言い文章は削れってね」
◇
(アルファベット・ブックではどういうことをなさろうとしているんですか?)
G「『殺人錠剤』が一冊目です」
(あの本を読んだら、あなたが陰惨なものに傾倒しているを思っても仕方がない…)
G「まあ、そうですね。あれはごく初期の作品で、あのころのわたしは、 みんなにちょっとショックを与えたいという衝動が抑えられなかった」
★どんどん変に/エドワード・ゴーリー×ロバート・ダーリン★
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