(ニューヨーク・シティ・バレエのすべての公演を見ているという話で) すべての公演、ですか。本当に?
G「ええ、たしかにすべての公演を見ています。 だって、忘れられないような名演がいつ現れるとも限りませんから。 ガラガラの土曜日のマチネなんかで、ダンサーたちが夢のように踊っていることだってある」
(いったいどういう気分になれば、一シーズンで三十九回上演される『くるみ割り人形』を 全部見つづけるような苦行ができるんですか?納得できる説明をお願いします)
G「最初見たときは、『なんてこった、バレエ史上一番退屈な作品だ』と思いましたよ。 それから、徐々に行く回数が増えていった。 『第一幕はなにも起こらないじゃないか、第二幕は可愛らしいけど』と人は言います。 だけどわたしに言わせれば、『くるみ割り人形』は第一幕こそが素晴らしい。 あれこそ、バランシンの天才のうちで人が気づいていない一面ですよ。 パーティのシーンは、あらゆる舞台作品のうちで最高です。 子供と大人の関係も、なにもかも──息を飲むほどですよ。 あれはいわばプラトン的イデアのパーティ、すべのファミリーパーティのエッセンスですね、 ──誰も見たことがない、理想でありながら実現不可能なパーティのありさま。 しかもそれが年を追うごとに、さらに少しずつ良くなっていく。
★どんどん変に…/エドワード・ゴーリー×トビ・トバイアス★
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