振り向くと、西山はさっきの箱から今度はアロンアルファを見つけ出してきて、
洗って流し台においてあったコップをくっつけているみたいだった。
ぼくは慌てて電話を切り、台所へ走っていった。
「なにしてんねん」
よく見ると、流しにおいてあったコップは台にアロンアルファで固定されていて、
その上に同じ形のコップが逆さに口を合わせてくっつけられていた。
そういう上下対称の物体が、狭い台所に四対発生していた。
そういえば西山って学校で実験するときも何でも器用にすぐ作ってるもんなあ、
とぼくは感心してしまった。
「どうするん、これ」
「おれ、シンメトリーって好きなんや」
「シンメトリーか」
さっき切り取ったふすまもよく見ると、三角形が右向き左向きと
順序よく同じ高さのところに並んでいた。
ぼくは今はどうしようもないと思って、シンメトリーには程遠い西山の髪型と
黙って続けられるその作業の続きを眺めていた。明日、はがし剤を買いに行こうと思った。
★きょうのできごと/柴崎友香★
|