自分の病気がわかりかけてきたのは、入院してから一週間目くらいの時だった。
ベッドでひとり悩んでいたとき、まわりの仲間が「あんたはバカだ」と
歯に衣をきせぬ辛辣なものの言い方をしてくれる。
エスパー?テレパシー?そんなのだれにだってあるよ。
バカだなぁ、なにいってんだよ、いまごろ・・・・・・。
悪意からではない。あきれた感じでそういわれると、清水さんは混乱した。
同情されてばかりいたら光は見えなかった。
精神科にきたら、バカといわれ少しは目が覚める。
励まされるより、ののしられる方が効果があるとは思わなかった。
けれど、バカだといった患者が次の日には「風邪、よくなったか」と、
声をかけてくれる。
浦河にきてはじめにそういう「人との関わり」があった。
そうしてきついもののいわれ方をしているうちに、清水さんのなかにわきおこった疑問は、
「あたしは性格が悪いんだろうか」ということだった。
以前だったら、絶対そんなことを認めたくはなかった。
★悩む力/斉藤道雄★
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