そして先輩は唐突に、子供が出来たと教えてくれた。
「スゲー!マジスゲー!母親じゃん!」
俺はビックリした。
「だから結婚するの。これであたしは人生合格!もう、バッチリ軌道に乗ったよ、
あとはもう、このまま一直線に行けると思うよ」
先輩は、俺の前方一メートルを、てくてく早足で歩いていた。だから表情は窺えない。
しかしその声色から察するに、事実正しく浮かれている。ハッピーなのだ。そうにちがいない。
「良かったですね。良かったですね。良かったですね」
俺は同じセリフを三回連呼して、彼女の新たな門出を盛大に祝った。
◇
「佐藤君なら、あたしを好きになってくれるよね」と言った。
「だってさ、あたしよりもダメ人間だもん。……こうやって長い間、
頑張って計略を推し進めてきたんだから、もう、あたしのとりこでしょう?」
「……」
「優しくしてよ。あたしも優しくするからさ」
★NHKにようこそ!/滝本竜彦★
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