だって誰でも、自分に恐怖を与えている場所にちゃんと戻らないと、
恐怖は一生ついて回るからだ。
「熊の場所」
◇
もしその別の「バット男」がちゃんと自分のバットを持っているなら、
今度こそは、そのバットをしっかり振るって、
自分を殴ろうとする相手の頭をかち割っていただきたい。
そうして僕の思うようなつまらない、判りやすい、
安直でだらしのないシステムをムチャクチャに破壊して、
「弱いものを叩かないとやっていけない奴ら」
なんて死ぬしかないような、厳しいシステムを作り上げて欲しい。
つーか何でもいいからとにかく「弱い」からって人間
ずっとやられっぱなしじゃねえんだぞってところを見せてもらいたい。
どんな人間だってバット持ってりゃいざというとき
それで誰かを叩くことだってあるんだぞ、というところを。
バット男はどこからどんな風にやってくるのか判らない。
自分より弱い奴をバットで殴るために。
僕はだから、どんなバット男にも負けないように強くならなくてはならない。
誰にも殴られないように、自分を鍛えなくてはならない。
負けたら下手をすれば、自分がバット男になってしまうかも知れないのだから。
どこかで表面がぼこぼこのバットを拾って手にして、
自分よりも弱い奴を探して殴ろうとしないとも限らないのだから。
「バット男」
◇
ちょっと古めの海外小説はどんな時にもわたしの薬。
「あの人の名前は、赤星哲也。あんたが殺してよかった人じゃなかったんやで」
あの頃わたしは「ああ頼む」にどれだけ近づいていたのだろうか?
「ピコーン!」
★熊の場所/舞城王太郎★
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