宿題

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2003年07月11日(金) 黄色い信号/沢野ひとし
しかしやはりはじめてのせいか、垂直になってくると息子の動きはピタリと止まり、

手足が不安そうにぎこちなくなるのだ。

「お父さん、ザイルもっと引いて」

やがて息子は切なそうな声を、下から見上げるようにして出した。

「お父さーん」少年の短く刈った頭の下を、すがるような眼が光っていた。

「お父さんのこと好きか」と声をかけると息子は青い顔をして黙っていた。

「ザイル引いて!落っこっちゃう」「だからお父さんのこと好きか」

「……」

息子は汗をかきながらやっとのことで岩場にたどり着いた。

崖の上からあたりの風景を二人で眺めていた。

横でミカンを食べている息子を見るとあわれでならなかった。

暗くなる頃家にたどり着くと、息子は母親の膝にくるまるようにしてもぐりこみ

「僕は悲しかった」と涙をためていた。


★黄色い信号/沢野ひとし★

マリ |MAIL






















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