宿題

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2003年03月19日(水) 青ひげ/カート・ヴォネガット
「どっちが善で、どっちが悪だと思う?」と彼はわたしにきいた。

「小銃か、それとも、われわれが人体と呼んでいる、あのゴムに似た、ブヨブヨふるえる骨の袋か?」

私は小銃が悪で、人体が善だと答えた。

「しかし、この小銃はだれのために設計されたと思う?邪悪な敵から家庭と名誉を守るアメリカ人が使うためだぞ」

と彼は言った。そこでわたしは、どの人体、どの小銃を例にとるかが大きな問題で、

どちらが善になることも、また悪になることもある、といった。

「で、そのことに最終決定をくだすのはだれだ?」

「神様ですか?」

「この地上の話だ」

「わかりません」

「絵かきだ――それと物語作者。これには詩人と劇作家と歴史家も含まれる」と彼はいった。

「彼らが善悪最高裁判官の判事なんだ。いまのおれはその一員だし、おまえもいつかはそうなるかもしれん」


なんという道徳的誇大妄想!


そう、いまになってそのことを考えてみると――やぶにらみの歴史教育が原因で

あれだけおびただしい流血が起こったことからしても、抽象表現派の画家たちのいちばんりっぱな点は、

そんな裁判所に勤めるのを拒否したことにあるかもしれない。


★青ひげ/カート・ヴォネガット★

マリ |MAIL






















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