そんなささいな所に気持ちを奪われる楽しみを片時なりとも見つけてしまった不幸にうつつを抜かす幸福
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「不快」を心掛け、挑戦的だったり挑発的な降る舞いがあたかも現代という同時代性を強調する
最適な手段とでも勘違いしてるかのようです。
少年期、青年期の「むずがり」や「性的な欲求と精神との不均衡」をいつまでも引きずったままの、
おとなになれないことを売りにした、経済効果に貪欲で、人恋しい甘えを隠そうとさえしない、
若者へ媚びることだけをおぼえた作品が精神の市場さえ蹂躙しているのです。
悪ふざけな奇怪趣味や、悪辣な好奇心が現代の表現ということになっているのはどうしたことなのでしょうか。
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結婚をする程の覚悟があって今の人「潮田登久子さん」と一緒になった訳ではないのに、
長く同居していると、情が通ってしまい、しかも子どもはいつの間にやら大きく育っていて、
仮にも「おとうさん」等と呼ばれてしまっていると……だらし無いもので、すっかりその気になっていて、
ある瞬間そんな中年の自分を発見して、愕然とします。
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空元気を出したり、虚勢を張ってみせたりはしていましたが、実はどうでも良かったのです。
写真の将来も、過去も、そんなこと、私の責任の負えることでもありませんし、
誰が何をしようが、私を脅かすことも、がっかりさせることも、意気統合することもありませんでした。
★ひかりの引き出し/島尾伸三★
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