さてわれわれの談笑が、ひと区切りついた時だ。
突然岩月君は「失敬するよ」と言ったかと思うと、われわれにクルリと背を向け、
御飯蒸し器から冷やめしを丼に叩きつけ、ヤカンの水をガバーッと掛け、
ザブザブと食い始めたのであった。おかずは福神漬だけであった。
やがて食べ終わるや、ボーンと丼を放り投げ、クルリとこちら向きになるや、
「失敬」と言ったのには驚いた。
吉祥寺の平屋建ての貸家に越すことになった。
その日私は早速手伝いに行った。
さて当日、私は彼の大机を一番奥の八畳間に無造作に置いたのであった。
どうせあとで、彼が好きな位置に置き直すだろうと思ったからだ。
(1週間後、新居を訪ねると)
あにはからんや、彼は机には全く手を触れてはいなかった。
つまり光線の入る廊下と窓から全く離れた、デタラメな、
しかも斜めの位置に置かれたままになっているのだ。
ここで、私は彼の無雑作、無神経ぶりに。改めて感心させられたのであった。
それでも尚、私が「机の上が暗くて具合がわるいだろう」と言ったところ、
彼は「べつに…」と言って煙草の煙を吐くのであった。
■この後、
……ここに改めて、岩月、加藤、両君の冥福を祈る。
と締め括られます。 書き出しは、
―ここで私は、仕事の上で、私への応援、協力を惜しまなかった、 今は亡き二人の親友の事を書きとめたい―
とかなってるのに、杉浦さんが書くと「二人の親友」という章も こうなるんだなぁと。
あと日野日出志さんや湯村輝彦さんの絵が好きだった、というのも なんだか良い話、と思いました。
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