学生時代の後輩は何でも私のいうことをハイハイ聞いてくれるので好きだ。
◇
女房は、私がどこかに行くのを嫌う。
ギャンブル場だけでなく仕事で人と会うために出掛けるのだって嫌う。
昔、私がサラリーマンをしていた頃は、私に「今日、会社休めば」とよくいっていた。
◇
問題は5日分の仕事をどうこなすかだが、いつも月の後半は割と少ないし、
香港に行くとなれば手を抜いてでもスピード仕上げできる。
それが私のマンガやイラストの特徴でもあるわけだから。
◇
女房が慌てふためいてやって来て、叫んだ。
「Sさんが死んだんだって!!」と。
Sさんは、ある雑誌の編集者で年齢は26か27でまだ若い。
1ト月に1度くらいは私にマンガやイラストの注文をくれるとても良い人であった。
それで女房は私に、パチンコをすぐやめて家に帰るように要請した。
しかし私は、つい先ほど、パチンコの玉をなんと1度に5000円分も買ってしまっていたのである。
さァ問題は、この玉を残して家に帰らなければならないのか?ということだ。
確かに私の知り合いが死んだことは辛い。
しかし、私が我が家に帰ったところで死人が生き返るわけではないのだ。
家に帰って死んだ人のために泣けばいいっていうのだろうか。
私の心は脈打った。帰るべきか、帰らざるべきか。
心の優しい人間と思われるか、それとも知人が死んだのに心も動じない冷酷な人間と思われるか。
まさに不条理映画「異邦人」の心境である。
そして私は選んだ。
心の優しい人間と思われる方を、ああ……である。
★気弱なギャンブラー/蛭子能収★
■好きか嫌いかっていうと好きなのですが、 いい人かヤな人かっていうと、ヤな人だなぁって。
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