○プラシーヴォ○
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疲れたな、と正直思った
私がいくら怒ったりすねたりしても ハム男は私を責めたり、許したりしない
いつもどおりの会話をして 話を早目に切り上げて 怒っている私をほったらかしにする
一人でプンスカ怒るのには限度がある とにかく飽きてしまうし、 相手にしてもらえないやり場の無い怒りは 完全に消滅しないにせよ、いつまでも持続しない
一度だけ、聞いたことがある 「どうして私が怒っても、笑ってごまかすだけなの? 私が理不尽な理由であなたに怒ってるなら 反論すればいいじゃないの」
ハム男は、だって…と薄く笑った 「俺、頭悪いからさ 口論では絶対がちゃ子に負けるんだもん 口論を押さえられずに別れ話になるのが嫌だからさ」
ハム男は、おびえていたのだ 中絶手術をしてから泣き上戸になって 少しヒステリックさを増した私が、 中絶手術を容認したハム男から、勢いで離れていくことを
いろんな人のホームページを見たり お寺に供養をお願いしたりして 少なくとも誰かに心の声を聞いてもらった私と違って きっとハム男は 私の手術のことを誰にも言ってない
言えてない
唯一手術のことを知っている私には 傷をまた開くことになるだろうということで 話ができないだろうし
一人で抱えたままで ずっと、負い目を感じていたのだろうか この人は
そう思うと、今のハム男の心境が知りたくて メールを打った
『事務所が寒すぎて、手がかじかみます』
全く関係ない内容。 けれども、 私から連絡(メール)するということ それは、もう怒ってないという合図
昼、弁当を食べながら会社のパソコンでインターネットを 見ていると、ハム男から電話がかかってきた
仕事で京都にいるけれど、大阪に急いで戻らなくてはいけないこと お昼も食べられないほど忙しいこと
とてもそうとは思えないほど弾んだ声が 電話から響いてくる
今回も、無事ハム男の 『怒りのがちゃ子を黙って見守る』ミッションが成功し、 私の怒りがおさまったのが嬉しいんだろう
ハム男、もっといっぱい話そうね あなたが萎縮してしまうのなら なるべく怒らない方向で検討したいと 思っています
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