遠距離M女ですが、何か?
井原りり



 偽姉妹の儀式


彼女は「犬」である〜13〜


東京の子どもらは「ビー玉」と呼ぶのだろうが、わたしらの子ども時代は男子も女子もみんな「かっちん玉」と呼んでいた。

地面に指でくぼみを掘り、陣地を決めて玉を取り合う、男子だけの遊び。

ついにルールも知らないまま、あたしはオトナになった。
今では「かっちん」をやって遊んでいる少年なんぞは絶滅種だ。


100円ショップで買ったガラス玉は虹色にコーティングされているのか、単純なラムネ瓶の色なんかじゃなく、とってもキレイ。

いはらに言われて最初の日は2個。翌日は3個。
このガラス玉をゴムで包んでアナに埋め込み、当日の予行演習をした。

なんとか数時間、入れたままで生活できることがわかった。

ただ、入れる時、いわゆる数珠つなぎ状態にはならず、カラダの中で3つのガラス玉が3角に接しあっているらしい。

となると、問題は出す時だ。

ひとつづつ、ひねるか結ぶかしてなんとか縦列に並んでもらわねばならない。


当日、体内に小さくってキレイな銃弾を仕込んだまま、パンツをはき、電車に乗って「K」に会いにいった。

あたしのカラダの中のことはさとられてはならない。

普通の顔してお話できるかな?
もぞもぞみっともないマネしないように……。


ふう。


スタバでコーヒーを買って、ベンチでお話してから、個室へ……。


縛りは……あはは、まだまだヘタですね>あたし。


烙印には憧れがある、と聞いていたので、線香を用意してきた。

4、5本並べて火をつけ、スタンプを押すように文字を書いていく。



一画め、横

二画め、斜め

三画めは逆の斜め

四画め、横棒の右上にちょん。



「犬」だ。



ふとももの内側にうっすらと小さく桃色で「犬」の文字の跡がついた。


文字の上から消毒液をたらす。



最後にぐったりと倒れている彼女のカラダを横向きにし、あたしのカラダの中からガラスの弾丸を出す。


そうしてそれを丁寧に消毒したあと、新しいゴムに包みなおして、今度は「K」のアナに埋め込む。


ひとーつ。

ふたーつ。

いかん、最初のが逆流してきた。
ぐぐっと押し込み、あらためてふたーつ。

最後、みーっつ。


ふう。

完了。

今度は仰向けにして、女にしかないアナの方にも小さなバイブを入れてやる。

びくんびくんとカラダが震えるから、怖いか? と聞くと首を振る。


「気持ちイイ?」
「はい」
「それはよかった」


時折、いはらに電話をして実況中継。

携帯を「K」の肩とあごの間にあてがって、いはらの声を聞かせてやる。

かすれる声であえぎあえぎ返事をしている。


本当に気持ちよさそう……。


あたしなんかが相手でよかったのかしらん? と思う。

わたしの指のさきに、オトコであるいはらがいるのだけど、あたしだったら相手がオンナだったらしらけてしまうかも?


とにかくビー玉の埋め換えもしたし、烙印も押した。



長兄の仕組んだ、偽姉妹の儀式はこれで終了。







2002年10月08日(火)
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