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■ 最終パンチ
彼女は「犬」である〜9〜
とにかく何か案を出さねば……。
「好きにしなさい、というのは逃げでしょうか?」 「逃げだな」
うーわ。そうきたか。
いはらはわたしにどんな返事を書かせたいんだろう? いはらの意向に沿った返事をなんとしても書きたいのに、書けないもどかしさ。
それって質問してもいいんだろうか?
そんなこともわからないのか、って言われるのが怖い。
「K」に対して「そういうなりふり構わぬ欲情ははしたない」と、たしなめてやるべきなのか?
思いっきり煽って地獄へでも落としてやればいいのか?
この際、相手がいはらだという前提で返信してはならないことだけは、なんとなくわかってきたが、それにしても、何にも浮かばない。
わからない。
欲望にまかせて好き勝手にしろ、というのが「逃げ」だというなら、たしなめる方向が正しいのか?
こんなふうに、文面を考える前の段階でつまづいてしまうなんて情けないし、初歩的な質問をして呆れさせたくはない。
いはらがわたしにどんな返事を書かせようとしているのか、彼の意図が読めない。
なんでだ? いつもなら、とっくに読みとれてるぞ。
人々が帰り支度を急ぐ、宵の口のフードコートで子どもにジャンクフードを食べさせながら途方に暮れるわたし。
追い打ちをかけるように、いはらは最後のパンチを繰り出して、わたしをノックアウトした。
「りりだけのいはらだと思い込んでいるふしがある。それは幸せをうむのか」
いはらは、りりだけのいはらじゃなかったんだ!
ってことは「K」にもそのチャンスがあるの?
いはらもまた「K」との行為を望んでいるの?
だとしたら、わたしは奴隷として主人の意を汲まねばならない。
振り出しに戻る。
いつまでたってもあがれない。
2002年10月04日(金)
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