遠距離M女ですが、何か?
井原りり



 M女の餌


彼女は「犬」である〜5〜


いはらが構築する世界の中で彼が切り結ぶ人間関係に関して、わたしは一切の嫉妬を禁じられている。

「りりが嫉妬して、どうするよ」

何度いわれたことか。


大事なことは、ここが誰のためにあるか、ということ。


いはらの歓楽のため。
いはらにとって愉しいことが何よりも優先されるということ。

そのために「K」がいて、わたしもいる、ということ。


M女の感情論はどこか他で、しかもいはらには一切関係なく、やってくれってことだ。
そんな感情論は捨ててしまえば、一番すっきりする。


だから、捨てた。


捨てきれないものだけが、ココロの中に残った。

名付けようのない、ひりひりした熱い痛みだけが、ココロの中に残った。




M女の餌は「傷」と「痛み」。

いはらはちゃんと餌付けをして、あたしを飼い続ける。






2002年09月30日(月)
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