Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2009年03月06日(金) 五月 『 うつ病 パンデミック 』 の危機



「 死ぬことがたやすい者は、決して哀れとは言えない 」

      ルキウス・アンナエウス・セネカ ( 古代ローマの政治家、哲学者 )

Never is he wretched for whom to die is easy.

                          Lucius Annaeus Seneca



徐々に暖かい日が多くなり、春の到来が近いことを肌で感じる。

4月になれば、新しい環境に期待を抱く、新入生、新入社員が街に溢れる。


ただし、その 「 新しい環境 」 に適応できない一部の人たちが、5月の連休明けに “ うつ病 ” に似た症状を引き起こすことがある。

それが 「 五月病 」 で、昔からある精神的な症状なのだが、今年は不況のせいで、希望する職種に就けなかった人も多く、増加する可能性が高い。

また、時世に関係なく、慢性的に “ うつ ” な人たちも、その時期は、症状が重くなることが多いと言われている。

彼らの症状は、「 無気力 」、「 やる気のなさ 」 が特徴なので、大型連休が終わって平常業務に戻る頃は、最も憂鬱な気分の高まる時期なのだ。

多少のストレスが溜まる程度ならよいが、自殺や犯罪など、別の諸問題を引き起こす可能性もあるため、周囲の人間は大いに迷惑する。


警察庁は5日、1月の 「 全国自殺者数 」 を 2645人 と発表したが、性別では男性が 1894人、都道府県別では東京都が 255人と最も多かった。

年間自殺者数は、1998年以来 10年連続で 3万人超を記録しているが、今年は経済環境が悪化していることから、さらに増加する不安が高い。

もちろん、いくら景気が悪化し、生活が困窮しても、大半の良識ある人々は地道に耐え、乗り越えるものだが、一部には、安易に死を選ぶ者もいる。

自殺者、自殺企図者の 9割は、自殺を図った時点で何らかの精神異常を患っているとみられ、景気云々よりも、個人の問題に依るところが大きい。

だが、不況による生活レベルの低下や、希望する職種に就けなかったことなどで、精神的症状を悪化させる人が多いのも、また、事実なのである。


それで、今年の五月に 『 うつ病 パンデミック ( pandemic = 感染爆発 ) 』 が起こり、未曾有の自殺者数が記録されるという見方が出てきた。

もともと、「 パンデミック 」 という言葉は、感染症や伝染病が世界的に流行することを表す用語だが、精神病も、周囲に感染を拡げる恐れがある。

いつも憂鬱そうにしている人間のそばにいると、マイナス思考や、ストレス、無気力感が伝染し、周囲の人たちも、精神的症状を引き起こしやすい。

ある企業を訪ねると、特定部署に “ うつ病 ” で通院中の人たちを集中して配置し、緊急度、重要度の低い資料づくりや、調べ物などをさせている。

解雇できないなら、せめて 「 感染が拡がらないように 」 するため、社内の他部署から “ 隔離する ” 政策をとることにしたのだという。


自殺者が増えると、マスコミが騒ぎ立て、その様子を眺めて追随する新たな自殺者を生み、連鎖的な増殖、感染爆発が起こる。

そこで、「 どうすれば自殺を防げるか 」 という議論も発生するが、前述した通り、それは個人的な要因が大きく、政治で解決できる問題ではない。

唯一、自殺の連鎖に歯止めをかける方法は、「 自殺しにくい社会 」 にすることであり、それ以外に効果的な手段は考えられない。

具体的に言うと、「 自殺企図者 ( 生き残った場合 ) を厳罰に処す 」 とか、「 一切の保険金を支払わない 」 など、色々と方法はある。

冒頭に挙げた セネカ の言葉が示すように、「 たやすく死ねる者は、むしろ恵まれている 」 という現実の中では、自殺を減らすことなどできない。






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