Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2009年03月04日(水) こんにゃくゼリー の 「 製造者責任 」



「 我々は時代の変化に適応しながらも、変わらぬ原則を

  持ち続けなければならない 」

              ジミー・カーター ( 第39代アメリカ合衆国大統領 )

We must adjust to changing times and still hold to unchanging principles.

                                  Jimmy Carter



1969年、アサヒ玩具 株式会社 から 『 ママレンジ 』 が発売された。

40〜50歳代の諸氏には、懐かしい記憶が甦る方も多いだろう。


これは、システムキッチンのガスコンロを模した玩具だが、家庭用の電源を使用し、付属のフライパンで、実際にホットケーキを焼くことができた。

女の子向け 「 ままごと遊び 」 の一種ではあるが、当時としては画期的な 「 本当に食べられる菓子がつくれる 」 ことで、大ヒット商品になった。

購入した女子の家には、食い意地の張った男子 ( 私など ) が群がって、一枚のホットケーキを餌に、彼女らは、モテモテ気分を味わえたという。

姉妹品として、綿菓子や、ポップコーンやら、クッキーなどがつくれる玩具も発売されたが、一年で17万個を売る 『 ママレンジ 』 は超えられなかった。

当時、ホットケーキを家庭で焼く習慣は珍しく、洋食店で食べるものだっただけに、子供でも 「 自分で焼ける 」 という仕組みは、感動的でもあった。


本体は、ニクロム線の上を雲母 ( ケイ酸塩鉱物 = 電気を通しにくい ) で覆われており、フライパンを乗せると通電し、外すと電源が切れた。

使用中に感電したという話は聞かないが、当然、「 焼ける 」 ということは、かなりの高温になる部位があり、ヤケド をした子供も多かったはずだ。

この玩具が画期的だったのは、ヤケド など万が一の事故を想定して、最高 1000万円 までの 「 傷害保険 」 が付加されていた点にもある。

以前、当時の商品開発担当者がテレビ出演し、その点にも触れていたが、驚くべきことに、数十万個を販売し、保険請求は 「 0件 」 だったという。

長時間使用すると、すぐに本体が熱くなる簡単な構造で、私自身も触って ヤケド した覚えがあるけれど、誰一人として、苦情を訴えなかったのだ。


先日、「 こんにゃくゼリー 」 を喉に詰まらせ、幼児が死亡した事故で、両親が、製造元などを相手に、損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。

名古屋でも、同社製品を喉に詰まらせ死亡した女性 ( 87歳 ) の長女が、同じように損害賠償の訴訟を起こしており、企業責任が問われている。

けして、製造元の肩を持つわけでも、訴訟を起こした人たちを非難するわけでもないが、はたして、これは企業が全責任を負うべき問題なのだろうか。

幼児も老婆も、自分で購入して食べたのではなく、訴えを起こした人たちに 「 食べさせられた 」 そうだが、その責任は、誰も問わない。

自分の子供や、介護を必要とする老人に 「 安全な食品を選び、与える 」 という責任は、親の義務、子の義務だと感じるのは、私だけなのだろうか。


アメリカでは毎年、日本の弁護士総数に匹敵する 2万人 近くが弁護士の資格試験に合格しているが、実際、訴訟の数も比較にならないほど多い。

日本で訴訟が少ないのは、「 和議で円満に解決したい 」 という民族性と、他者責任を追及する前に、「 先ずは自己責任を省みる 」 姿勢による。

自己責任を棚に上げ、他人の落ち度ばかりを追及することは、麻生 総理 の口癖じゃないけれど “ さもしい ” とされ、あまり好ましくは思われない。

ただ、最近の傾向をみると、日本でも 「 アメリカ型の訴訟 」 が増え、親の不注意とか、責任を省みる前に、とりあえず企業を訴える事例も多い。

企業側も、苦情処理が下手で、顧客の感情を害するような 「 ダメ社員 」 が多く、訴訟しか解決手段が無いというケースもあり、問題は複雑だ。


安全な商品を提供することも、企業の社会的責任ではあるが、あまりにも過保護に 「 安全 」 を徹底すると、ユニークな商品開発が困難になる。

昔から、「 可愛い子には旅をさせよ 」 というが、多少、ヤケド は負っても、子供に楽しく調理体験をさせる 『 ママレンジ 』 のような発想は必要だ。

企業に製造者責任があるように、消費者にも 「 正しい使い方 」 を遵守する責任はあるはずで、時代が変わっても、その原則は保持すべきだろう。

誰が、どんな使い方をしても怪我しない商品なんて、効用も薄く、面白くないわけで、そんな “ つまらない商品 ” ばかりだと、購買意欲も低下する。

やむを得ない場合もあるだろうが、企業が訴訟を恐れ、刺激的な新商品を開発しなくなれば、さらに景気が鈍化するのも確実で、深刻な問題である。






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