2009年03月02日(月) |
AIG 9.6兆円の赤字 「 ゴネ得 」 を求める企業と個人 |
「 神は私に、成功をおさめることではなく、真心をつくすよう命じた 」
マザー・テレサ ( ローマカトリック尼僧 )
God has not called me to be successful ; he has called me to be faithful.
Mother Teresa
時々、暇つぶしに 「 ある実験 」 を行っている。
誰でも簡単に出来ることなので、一度、お試しになってはいかがだろう。
朝、起きてから寝るまでの間、「 今日は “ 絶対に損をしない ” ようにする 」 と決め、一日を過ごしてみる。
電車やバスに乗るときは、人と争って先に乗り降りし、スーパーで買い物をするときは空いたレジへ駆けつけ、友達と会えば、自分のしたい話をする。
そして次の日は、「 今日は “ 自分を後回し ” にする 」 と決め、前の日とは真逆に、きわめて控え目な一日を過ごしてみる。
自分以外の全員が乗り降りした後に動き、スーパーでは、わざと混んだ列、老人の後ろなどに並び、急かさず、ゆっくりと順番を待つようにする。
誰かと会えば、他人の意見に耳を傾け、自分の主張は抑え、渋滞では他の車に進路を譲り、人の役に立つことを探し、自分の欲得は求めない。
何度か試すと、「 後者のほうが、気持ち良く一日を過ごせる 」 ことに気付くのだが、現実問題として、それを恒常的に継続することは難しい。
時間の浪費は 「 経済的損失 」 を招くので避けたいし、耳を傾けるのには値しないほど 「 馬鹿な主張 」 をする御仁も多く、ストレスが溜まってしまう。
ただ、たとえ年に一回でも、このような 「 実験 」 を行うことで、強引に自分の主張を通すことの虚しさ、みっともなさが実感できる。
この 「 実験 」 は、一昔前に中国地方の僧侶から教えてもらったものだが、一般のビジネスマンにも広く使える、「 効率的な精神修養 」 だと思う。
殺伐とした現代社会において、本当の自分を見失わずに保つ術としても、有効だし、簡単に出来るので、皆様もお試しになってはいかがだろうか。
米政府の公的管理下にある保険大手 『 AIG 』 の昨年度決算は、純損失が約 9.6兆円 と判明し、約 2.9兆円 の追加公的資本注入を発表した。
昨年9月の 「 リーマン・ショック 」 以降、金融機関、保険会社、自動車産業などが “ 当たり前 ” のように、公的支援を要請し、止まる気配がない。
景気対策のため、やむを得ない側面もあるが、巨額の損失を出した責任が曖昧なまま、国家に救済を求める姿勢は、大企業の横暴とも感じられる。
事情はともあれ、中小、零細企業では通らぬ 「 ゴネ得 」 のようなものが、はびこっているのは忌々しき事態であり、資本主義経済の秩序も危うい。
一概に、誰が悪いというものではないが、あらかじめ定められたルールが、敗残者の性質で反故にされる風潮は、いづれ大きな反撥を招く。
一般市民の中にも、そうした 「 ゴネ得 」 の風潮は蔓延しており、たとえば、親の責任は棚上げし、教師に噛み付く 「 モンスター・ペアレンツ 」 も多い。
同僚との競争を負けた途端に、一転して競争社会を否定し、熾烈な競争に追い込んだ企業を訴え、身分保障を求める 「 うつ病社員 」 も増えた。
自分の欲得のためには、ルールを遵守し、黙って地道に働く人々を犠牲にしても構わないといった 「 ゴネ得 」 思想がはびこり、嫌な世の中になった。
経済が発展し、生活に余裕が出来たことで、弱者に優しい社会となったのは喜ばしいことだが、「 弱者 」 と 「 敗者 」 は違うという認識が足りない。
弱者は、救済することで立ち直れるが、敗者は、甘やかすと節度を越えた要求を展開し、一度、「 ゴネ得 」 に味をしめると、歯止めが利かない。
終戦直後の日本と、今の日本を比べると、はるかに現代のほうが豊かで、治安も良く、暮らしやすいことは明白である。
それなのに、自殺者、自殺企図者が増え続け、政治不信、自分の境遇や社会への不満が絶えぬのは、旧来の社会秩序が崩壊しつつある証拠だ。
その最たる原因は、「 ゴネ得の通る “ ぬるい ” 社会 」 にした結果であり、それが 「 他人のせいにし、自分で責任をとらない 」 連中を増殖させた。
冒頭の マザー・テレサ の言葉にある 「 真心 」 とは、弱者に手を差し伸べる行為だけでなく、個々の人間が、自分の仕事や役割に捧ぐべきものだ。
個人や企業が、自分の窮状を嘆き、「 ゴネ得 」 という手段で損をせぬよう暗躍する時代に幕を引かないと、不況を脱し、未来を拓くことは出来ない。
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